なぜこんな結末に?納得できない確定調書に説明を求めるが…

「そして第2回目の調停で調停委員から、妻の金子さんが改めて雄二ちゃんを含めて話し合う事に承諾をしてくれた場合のみ、全遺産の相続手続きが無効になると説明してきた時に、相手側の弁護士は再び妻の金子さんが行った相続手続きは有効であるとだけ主張して、その後はこちら側の主張に対して守秘義務などと言って反論をしないで、調停を終了させるのを最優先させていたでしょう。

この相手側の弁護士がとった行動には2つの重要な意味があったのよ。私も今日の確定調書の内容を見て、やっと理解できたことなので今から詳細な説明をします。

まず1つは、江藤光夫さん側が遺産相続対策として生前に行ったのは、金融機関(銀行等)で少ない金額を入金し、口座開設をして休眠口座を作成していたのです。

休眠口座とは、預貯金者等の取引(例えば現金の入出金など)が金融機関で行われた最後の日から10年以上取引が無い場合に、国が所定の機関に移管し社会課題の解決や民間公益活動のために活用する制度に該当すると判断して、口座内の残金を没収する事ができる口座なのだけど、10年が経過する前に対象休眠口座の名義人として登録されている江藤光夫さんの遺産相続調停の相手側(今回は薬師雄二)が、対象口座の本人が死亡した事実を金融機関に連絡すると、取引ができないように凍結されてしまいます。

ここからが私も理解してなかった重要なポイントなのだけど、私達は江藤光夫さんが死亡した後に見つけた未処理分(休眠口座の残高分)と雄二ちゃんの承諾を得ない状況で実施された妻の金子さんに遺産相続された分を合算して、江藤光夫さんの全遺産と考えていたのだけど、相手側の弁護士は元愛人で現在は妻の金子さんが遺産相続のやり直しを認めない限り、私達から遺産分割協議は行われる事がなく、雄二ちゃんの承諾を得ない状況で実施された、妻の金子さんに遺産相続された分が江藤光夫さんの全遺産だと裁判所が確定することを理解していたのです。

そして、相手側(今回は薬師雄二)の遺産相続対象部分は、休眠口座の残金部分のみとされてしまったのです。そして、2行の金融機関に少ない残金の口座が存在していたのは、相手側に早く見つけさせる為にわざと複数の金融機関に休眠口座を作成させてそのままの状態にしておいたからです」

雄二は伯母さんの説明を少しでも聞き逃さないように、自然と前のめりになっていった。

「もう1つは、一方的な不利益の発生が無いように法律で定められた雄二ちゃんの権利で、相続人が相続できる最低限の取り分である江藤光夫さんの全遺産相続における遺留分を、実際の状況では無効にして雄二ちゃんの遺留分まで妻の金子さんが獲得できるようにするためだったのです。

例えば、今回もし江藤光夫さんが全遺産を妻の金子さんに相続させる内容の有効な遺言書があった場合、雄二ちゃんには相続対象者が有する2分の1の半分、4分の1が遺留分に該当します。そして、妻の金子さん側が獲得できる分が減額されてしまいます。

そこで、わざと有効な遺言書は残さないで、雄二ちゃんの承諾も得ない状況で休眠口座の残高を除く全遺産を相続する手続きを終了させたのです。

あとは、今日の第3回目の調停で確定調書に記載されている内容を調停委員が雄二ちゃんに認めさせるのを相手側の弁護士は、裁判所にも参加しないで黙って待機していたのでしょう。そして調停が終了した後で、確定調書を依頼人の江藤金子さんに渡して弁護の仕事を完了させたのです。

私は、こんな法律の抜け道があるのを理解していなかった。弁護士として、雄二ちゃんに無念な気持ちを与えることしかできなかったことをお詫びします!」