ここの世界

海の潮騒が聞こえる程近くに

私の蝶が恋を振り払って飛び

山のこだまが聞こえなくなる程遠くに

造花の哀しみが空を伝染していく

ああまるでここでは日常の生活のように

美しい音楽が流れているのです

そして美しい娘達が輪を作って

果てしなき海のように踊っているのです

私はここで鹿のようになって暮らせるだろうか

君が薔薇のように刺を持ってここに咲けば

夏の太陽がめくるめく戦慄と共に昇る故に

私は小鳥のような小さな心を持って、

いつも騒いでいるだろう

もうすぐ秋の収穫なのでしょう

ここはいつも子供達の笑い声で一杯で

それを手でつかまえようとする狂った女のように

豊かな想像の世界ではち切れそうなのです

 
※本記事は、2021年7月刊行の書籍『黒い花I』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。