糸の切れた凧(たこ)

五月十二日(木)

〈すみません、一緒に会社を出た連中と会議の延長で、まだ話をしないと帰してもらえません。用意してもらった御飯をすぐに食べられなくなりました。朝御飯にできたらいいんだけど、ごめんなさい〉

孝雄が昨夜に送ってきたメールだ。昨日の朝、会社に行く前に、

「おにぎりぐらい、できないのか!」

と、突然怒りだしたので、すぐに握って持たせてやったのだが、このところもまた、ずっとカップ麵ばかりでキレ始めたのかと思い、「晩御飯の用意もしておくから」と言って駅まで送ったのだった。しかし、朝になっても帰ってこない。そうこうするうち、ポロンと携帯メールの着信音が鳴って、

〈すみません、家に帰る時間が取れないので、このまま会社に行きます。帰るのは明日になると思います〉とのこと。

次女の佳奈美が、寝坊したと言って慌てて起きてきた。子どもたちは普段、駅までは自転車で行っているが、今日は孝雄がいないことだし、車で送ってやることにした。(娘やし、すぐやからまあいいか)とジャージ姿で家を出る。

車を走らせていると、携帯電話が鳴った。病院からだった。

「お義母様の息が荒くなっているので、すぐに来てください。息子さんに電話したんですが、つながらなくて……」