この頃、私は話のネタが尽きると、「今何してるの?」を常套手段として使い始めた。千夏は、それに対して臆することも面倒くさがることもなく、「お母さんとクリスマスのリースを作っているよ!」「今は洗濯物をたたんでる」「年末の大掃除だね」などと忙しそうではあったが、それでもこちらをおろそかにすることなく、返事をくれた。

「今日はこんな話をしたよ!」とお母さんに話す千夏の姿が目に浮かぶようで、私の勝手な想像ではあるが、母親公認の恋愛だったのではないかと思う。

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これまで、女の子どころか自分から連絡しないと誰からも連絡さえこなかった私が、千夏が毎日連絡してくれることで、活気が出て、日常生活が変わったことは言うまでもない。

まず朝は前日のやり取りを見返してLINEで一通。お昼には返事がきてまた一通。夕方からはリアルタイムで何通もやり取りを重ねた。

毎日に楽しみができて、長く、へとへとになっていた仕事もウキウキ気分で乗り切れた。ときどき職場の上司に自慢したり、時間が空くと、千夏とどんなやり取りをしようか考えを巡らせていた。

おそらく、以前より明るい表情でいることも増えただろう。とにかく、何もかもが「充実」していた。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『バイナリー彼女』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。