次に、スペースを置きながら並べられる英語の動詞や名詞が不思議だ。言葉もさることながら並ぶ順序も興味深い。Web Site を訪れる人に質問する時に良く行われる簡易なアンケートに使われるのが、<input type = "text" name = " ○△□" > という記述だ。

これはinput 要素と呼ばれ、"text" などの含まれている制御の種類をtype属性と呼ぶ。これらの言葉を「=」や「"……"」といった記号を使って散りばめていく。

一方、会計基準では、物品を購入すると、資産が増えるだけではなく、負債も同じ額増えると勘定する。例えば、脱サラして起業したウェブ・デザイナーが、退職金を取り崩して12万8000円でパソコンを買った場合、資産の部(Debit)に「資産 12万8000円」と計上するだけでなく、負債の部(Credit)にも「退職金取崩 5万円」と「純資産 7万8000円」と計上する。

このようにして、収支を均衡させながら記述していくのでBS(Balance Sheet)と呼ばれる。

以上、英語では他人に触れる行為の認識の相違、ITでは厳密な基準に従ったコンピュータへの命令の出し方、会計では財務状況を立体的に把握する工夫を見てきた。

いずれにも共通しているのが、私たちの日常生活では使わない「決め事」が厳然として存在するということだ。言葉を変えれば、違いを認めて尊重し、コンピュータという機械に命令を実行させ、時間と共に形を変える資産を立体的に把握するには、まず思考回路を切り替え、次に切り替えた先の決め事に従わなければならないのだ。

この苦痛を伴う過程は、世界を別の言語で再構築する努力を強要する。この経験が、実は複眼思考を可能にさせ、自分の人生を広がりのある豊かなものに変えていくのだ。

皆さん、積極的に自分に投資して、「言語」を学び修得しましょう。努力の先に見える世界は、きっと豊穣な実りをもたらしてくれる筈です。世界の解釈は決して一義的に決まるものではないのです。

異なる言語、しかも世界全体を描き切れる言語を学ぶことで、人は謙虚さを取り戻し、他人に優しくなれます。さあ、勇気を持って第一歩を踏み出しましょう。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『未来を拓く洞察力 真に自立した現代人になるために』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。