一の巻 龍神守の里

「我の名は(たつ)の和清! 隣に居るのは嫡男の羅技じゃ。貴殿の国は戦いに明け暮れてあちらこちらの里国を滅ぼしていると風の便りで聞いております。この小さき里に友好を結ぶ為にわざわざ来られるとは実に妙ですなあ。我等一族は戦を好みません。何事にも穏便に対処して来ております。本日ここに来られたのは本当に友好を結ぶ為ですかな?」

「な、なんと? 貴殿は丸腰のわしを疑うのか?」

「いや、疑って申し訳ない」

和清は奥に向かって手を一度叩くと、侍女達が酒や食べ物を運んで来た。

「先ほどの我の失言、許して下され……」

「いや、何、前触れもなく突然押しかけて来ていきなり友好を結ぼう等とわしも無礼極まりない。失礼した」

和清は保繁に杯を渡すと酒を注いだ。

「友好の酒じゃ! 共に飲み交わそう!」

猪と鹿の肉で作った料理のほか、米の握り飯や木の実など、侍女達が保繁達の前に次々と並べていく。

「これ等の鹿と猪は羅技一人で仕留めた獲物達です。貴殿をもてなすにはふさわしいと思いましてなあ! 急ぎ、調理させました。存分に食べて下され!」

すると、阿修の国の者達は歓声の声を上げた。

「うわあ! この鹿肉は実に美味い!」

「こ、これは米ですか? こんなに白い米は食べた事が無い。それに何とふくよかで香りが良く、艶のある美味しい米だ!」

「この猪の肉は臭みが無くて、とても柔らかいぞ!」

阿修の家臣達は美味い美味い、と口々に言いながら出された料理を瞬く間に平らげていった。

「しかし、御一人で猪を倒すとは信じられませんなあ。何か仕掛けでもされたのですかな?」

保繁が問うと、重使主がひびの入った木刀を見せた。

「この木刀で一撃にて仕留められました」