本稿で提唱する「PBCグラフ」について

(2)売上原価と仕入払額

研究生:P/L売上原価と、CF仕入支払額を、わざわざ比較する理由は?

教 授:P/Lでは「売れた分の原価」額を計上しますが、キャッシュ(CF)の「仕入の支払額」を抽出することで、「売れ残り在庫」が推定できます。

※仕入の支払額は、当期中の仕入払額を抽出する必要があります。わざわざ抽出する目的は、B/S棚卸在庫額の推移との整合性や粉飾の可能性を見るためです。

・前期のグラフでは、P/L計上額の「売上原価」(左側)よりも「/仕入払額」(右側)の額がかなり多く、過剰仕入と考えられます。売れ残った分は、棚卸資産(在庫額)に滞留するはずなので、B/Sに入力した数値の動きを確認しましょう。

・直近期も、前期ほどではないですが、過剰仕入の状態です。B/S貸借対照表の動きを確認しましょう。

・棚卸資産が増えています。その資金は「負債の部」の「短期借入金」の増加から賄っていると考えられるので、悪い資金繰りになっている可能性も考えられます。

研究生:なるほど、たくさん仕入れてキャッシュアウトしても、売った分の仕入しかP/Lでは計上しない。つまり「売れ残り」が多くてもP/Lには関係がないということですね。

教 授:そうなんです。「売上原価」と「/仕入払額」の関係は、結果としてB/Sの「棚卸在庫」の増減や適正さを検討することになります。次に、P/Lの項目でキャッシュアウトと一致しない「減価償却費」について考えてみましょう。