「それにしてもこのガッコ、入り口分かりにくいのな」

多分、休日の夕方などに渋滞を避けるクルマが住民の生活道路に入り込むのを防ぐためなのだろう、道路は時間帯によって細かく規制されている。

「何だか迷ってたらさ、女子の生徒さんが親切に道案内してくれたよ。あ、あの子」

生徒が利用することが多い北門、住宅街の方に向いた校門から、一年生の女子がグラウンドに出てくる。ショートカットの髪と短いスカートが軽やかだ。

「さっきはありがとね」

「永瀬さん、ちゃんと分かりました?」

佑子にとっては1年C組の教室で顔見知りの子だ。

「海老沼(えびぬま)さん、ありがとう」

佑子が微笑みを向けると、海老沼美由紀(みゆき)は満面の笑みを浮かべる。

「永瀬さんって、和泉先生の高校の同級生なんですって?」

「うん」

「ホントに、それだけ?」

いたずらっぽい笑顔で、佑子の顔を見上げる。実際、それだけではないから、つい視線を逸らしてしまうのだが。

「ねえ、和泉先生。先生はラグビー部のマネージャーやってたんですよね」

「そうよ」

「どこの高校?」

「葉山高校って、やっぱりこっちの子には馴染みないよね」

「永瀬さん、同級生だったんでしょ」

基は、一通り購入する品物を決め、そろって渡り廊下に腰かけてスパイクに紐を通している部員たちの方に視線をやっている。その横顔は、とけ崩れそうなほど嬉しそうだ。

「和泉先生、やっぱりマネージャーって必要なものなの?」

「私は、高校生の時、必要とされるようには頑張ったつもりだったけどね」

海老沼さんは急に視線を足元に向けて、グラウンドの土を左右にかきながら、つぶやくように言う。

「私、ラグビー部のマネージャー、やってもいいかな」

「何で、そう思ったの?」

自分のことが、やはり思い出される。どうしてその選択をしたのか、高校時代の自分も、何度も自分自身に問い直したものだった。佑子の場合は、その選択が正しかったと、今は言える。でも、男子の部活のマネージャーは、やっぱり苦労が多い割には日陰の存在にも思えるし。

※本記事は、2021年6月刊行の書籍『楕円球 この胸に抱いて  大磯東高校ラグビー部誌』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。