第1章 心構え

If it’s not fun, why do it?

「建設業 現場監督」って検索するとろくな評判でないことがわかる。日常の業務で疲れ切った新米現場監督がこんな評判を見れば、そりゃ辞めたくなったりウツになるのも納得だ。

自分より早く帰る人を見ては「いいな、あの人は仕事が少なくて、楽しそうだなぁ」と他人ばかりうらやましく思えてしまうこともある。だけど、スマートゼネコンマンは、スマートになる前から、まず目の前の仕事を楽しんでいる。

「If it’s not fun, why do it?」は、楽しくなければやる意味ないよ。という意味で、アメリカのある有名なアイスクリーム屋さんの言葉だけど、これは現場監督だけでなく、全てのビジネスマンに言えることだ。

日本にはまだ、仕事に楽しさを求めるなって考えの人が多いけど、心配しなくていい。このアイス屋さんのように、楽しくなければ仕事じゃないって考え方の人もいるし、むしろそういう人が経営する会社の方が成長してきている。これからは楽しんだモン勝ちの時代だ。

それに、一代で世界のHONDAを創り上げたあの本田宗一郎氏もこう言っている。

「人間は楽しんでいる時、最高の力を発揮する」と。

僕ではなく、本田宗一郎氏が言っているのだから、その効果は絶大のはずだ。他にも数々の著名人が楽しむことの威力について名言を残している。時間がある時に自分で調べてみると、自信にも繋がるので、オススメだ。

僕はよく現場で、「中根さんは毎日楽しそうだね」とか、「元気だね~」と言われることが多かった。若手だからと張り切っていた面もあるとは思うが、基本的には楽しむことでプラスのエネルギーが生まれると僕は信じている。そのため、できるだけ目の前のことを楽しんでやろうとするクセがあるのだ。

例えば建設現場で必ずあるのが、作業開始前の全体朝礼だ。現場の職人やゼネコンの監督全員が集まり、その日の注意事項を確認し、みんなで安全設備の確認や、声掛けを行うとても大切な時間だ。でも、毎日やるが故に、ともすれば形骸化してしまうため、本来の目的を果たせず、ただ何となく体操をして、ダラダラしてしまっているような場合が多い。そこは、その現場の職人の空気感とか、色々と難しいのだ。

だから僕は朝礼で、世間話を交えて現場の注意事項を説明したりしていた。覚えやすいようにニュースで話題になっていることにかけて説明することもあった。一番うけたのは、朝礼の終わりによく「エイエイオー」といった掛け声をやるのだけど、2014年にかの有名なテレビ番組『笑っていいとも!』が終了した日には、「今日も、安全作業でやってくれるかなー??」と声をかけたのだ。するとそれまでにない大きな声で「いいともーっ!」と返ってきた。

また、アントニオ猪木さんの誕生日には、「元気があれば、安全作業もできる。いくぞーっ! 1、2、3~」というだけで全員が「ダーー!!」と返してくれた。これは3現場くらいやったけど100%盛り上がる。人間不思議なもので、大声を出すというのは潜在意識が働くからなのか、大声で発したことや聞いたことは、無意識でも実行するのだ。

だからといって、これをやったから事故が起きなかったのかとズバリ言われると答えにくいけど、いい空気感というのは結構大切なのだ。楽しんでやること、更には楽しんでもらえる工夫をすることで、周囲の人には傾けない耳をこちらにだけは傾けてくれたりする。やっぱり自分の意見を聞いてもらえたり、自分の指示がちゃんと通ったりするのはやりがいがあるし、楽しい。

あの人が言うと、なぜか知らないけど職人はちゃんとやるんだよなぁって人が現場にいないだろうか? それも、所長以外でだ。所長は決済権限を持っているので、どんな職人だって基本的には言うことを聞く。でも、若手はもちろん、現場監督の指示になんて職人は全く遠慮しない。だから、職人が言うことを聞いてくれないことなんて普通にある。にもかかわらず、なぜかあの人にだけは職人がついていくんだよなぁという人こそ、スマートゼネコンマンに他ならない。

職人は、スマートゼネコンマンの指示なら、喜んで聞いてくれる。それは、この人の言う通りやれば現場がはかどるとか、こいつと仕事していると楽しいからとか、その職人にとって前向きな気持ちが働くからこそ意見を聞いてくれるのだ。

「楽しくなければやる意味がない」というのは言い過ぎかもしれないが、楽しさから離れすぎる傾向のあるゼネコンマンにはそれくらいがちょうどいいのではないだろうか。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『スマートゼネコンマン~残業なしで成果を出す次世代現場監督~』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。