りゅう君

警察署にかけつけてくれたりゅう君は私にはとても優しかったが、血の気の多い人だった。私がちょっと傷つけられた、と話をしたとたん、彼は包丁をキッチンから取り出し、それを手に巻きつけて外に飛び出していったことがある。

仕返しをするつもりだったらしい。結果的に誰も刺さずに帰ってきたが、これが続くと思うと少々不安になった。

彼もまた、幼少期に苦労してきた人だった。悪質ないじめにあっていたのだとか。私たちは心の奥底の寂しい部分を癒し合っているようだった。

家を出てからもタバコを吸っていた私は、喘息発作が起きても吸っていた。当然悪化し、入院になったこともある。彼に依存していた私は入院中、刺されていた点滴を引っこ抜いて病院から脱走した。少しの間でも離れることが恐怖に近い苦痛なのだ。

私たちは「共依存」の関係だった。一見お互いのためになっているように見えるが、無意識のうちに相手の足を引っ張っている。2人とも自立していないまま相手に寄りかかっている状態であり、この関係では成長は得られないし、ドツボにはまっていくことも多い。

高校生になってからは神代先生と会う機会はなかった。以前勤めていた病院から異動したようだった。しかし当時関わっていた周囲の人たちがケガや病気で病院に運ばれたことが何度かあり、病院に行くたび、私は医者になりたいという気持ちが強くなっていた。