保育の現場と「男性保育士」

男性保育士は、数字上では少しずつ増えつつあるように思います。

養成機関も男女共学になっているところが、この一〇年ほどの間に増えました。

保育園や幼稚園の求人に対して応募する人が減少している現実から、就職しやすい状況もあります。

約二〇年前には、周囲の理事長や園長先生から聞かされた男性保育士を採用しない理由は、給与体系が若年の女性中心に考えられているために昇給が伸びない、役職を用意できない職場状況なので採用できない、ということでした。

また以前、当園で採用した保育士(女性)や他園の園長先生から聞いた話では、同じ養成校の同期の男性卒業生は、保育士として就職しても、一年~三年目ぐらいで退職したり転職したりする人が多い、ということでした。

退職に至る理由はいろいろと考えられます。

とはいえ、一年目もしくは三年目の時期になって、居心地が悪くなることがもっとも大きな理由であると思います。

受け入れ側にも、男性保育士にも問題があるように思います。

まず、男性保育士は新卒採用時に、「男性らしさを失ったら、園としては採用した意味がない」というようなプレッシャーを、受け入れ側の園からかけられている現実があります。

保育士という仕事柄、子どもの身のまわりの支援をまじめにやっていると、しだいにやさしくなり、男性らしさを失っていくということが起こってきます。

すると周囲から冷たい視線を受けるようになって、居心地が悪くなってくるようです。

最初のうちは「男の先生だ」と言って子どもたちもよろこび、保護者からはめずらしがられるようですが、半年もするとめずらしさがなくなってきます。

保護者のなかには、お母さんだけではなくお父さんのなかにも、男性保育士に対して「一緒にプールに入らせてほしくない」「抱っこさせないでほしい」などの苦情を園に言うかたもいます。

また、同僚の女性保育士が、クラスのなかでどのように男性保育士と一緒にチームを組んで仕事をしてよいのかわからない状態になったりもするようです。

これには、養成校の教育にも問題があるように思いますが、保育士としての教育を充分に受けていないことに問題があるように思います。

日常保育のための記録や準備物の用意などの製作能力の低さなどが原因で、同じクラスを担任する保育士との関係がスムーズにいかなくなることもあります。

こうなると、感情的対立にまで発展してしまうことが起こってしまい、しだいに居心地が悪くなり、退職にまで至ってしまいかねません。