人類が通信技術を発明し大昔に使っていた通信電波であり現在では宇宙観測以外では使われることはない。

原始的な通信技術による無線が続く。

「こちらウラシマ、ウラシマ、地球応答願います」

音量が小さく切れ切れの音声が届く。

「こちらウラシマ、この無線を傍受している方応答願います」「こちらウラシマ……」

無線の発信と同時に、ウラシマからレーザービームが地球に向けて発信された。

地球の天文台からの観測ができるようにモールス信号で「トントントン ツーツーツー トントントン……」。もはや歴史書の中でしかこのモールス信号が使われた形跡はない。

地球防衛隊は歴史言語翻訳コンピューターで内容を確認、4万年以上前のホモサピエンス第一世代の人類が通信に使っていた信号であることを確認。

直ちに防衛隊は返信を送る。

「こちら地球防衛隊、ウラシマ受信しました」

「ウラシマ、所属はどこの星ですか? どこからの飛来か、ウラシマ応答願います」

青く輝く地球を眼下に眺めながら、ウラシマは地球からの問い合わせにもどかしさを感じながらも自分のいきさつを報告する。

すでにウラシマのことは忘れ去られていると感じながら。

「船名ウラシマ、所属国は日本、西暦2030年今から42195年前に太陽系第3惑星地球を出発、オリオン星の左隣、冬の大三角の中に位置するクガニタチ星の右側のアルタカ星第三惑星AL─3に到達後、無事帰還しました」

地球防衛隊は、1万光年も離れている星から帰還したとの報告に、にわかには信じがたい驚きである。

「ウラシマお帰りなさい、ずいぶんの長旅でしたね。ご苦労様でした」と、ごく在り来りの返信を打つのがやっとのことである。

地球防衛隊の面々はウラシマからの報告に4万年前の人類にこんな技術力があったとは意想外の驚きを抱いた。

ウラシマからの報告が続く。

「当船はもはや分解寸前であり、自立航行能力はわずかしかありません。メインコンピューターの作動時間も、あと1時間ほどしかありません。とりあえず出発してからの観測データと全飛行データを送ります」
 

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『U リターン 【文庫改訂版】』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。