2、

だが いつのまにか

鉛筆をつまんでいた指先が

動いている

さらさら

文字が

並ぶ

落書き

のような

最初の一行

闇夜に光る

小さな

やがてその灯に

小魚のようなコトバが寄りつく

そこにやや大きめの魚たちも群れてくる

一匹一匹

一行一行

そしてまた文字列一行

それはつぎつぎに生まれ

集まってきて

用紙の空白を埋めていく

3、

一つのコトバが生れる

するとそのシンメトリーの場に

もう一つのコトバが用意される

「幸福」のシンメトリーの場に「不幸」

「誕生」のシンメトリーの場に「死亡」

「今世」のシンメトリーの場に「来世」

こっちとあっち

この世とあの世 駅前タクシーが往復し

コトバを乗せて また戻ってくるように―

最も大切なことは最も陳腐なことである

最も優れたアイデアとは

陳腐と陳腐のあたらしい組合わせである

意味の異なる二つのコトバがある

その異質と異質を衝突させてやる

すると衝突の硝煙の中からもう一つの見慣れぬコトダマが浮かび上る

決して交わらない意味の平行線がある

そのときは線と線を結ぶヨコ線を引く

二本の線とタテ線の接触点にはもう一つの定義が刻まれている

二つのコンセプトがあったら線で繋ぐ

線の中間点から時系列の矢印を伸ばす

その矢印の先にあらたな未来予知が示されるだろう

矢印を内に伸ばすか外に伸ばすか 知に伸ばすか情に伸ばすか

生に伸ばすか死に伸ばすか 天に伸ばすのか地獄に伸ばすのか

それはきみと鉛筆次第だが―

こうして

いろいろ

いろいろと列挙されていくだろう

しかし

まだ評価を

急いではならない

4、

似ているコトバたちを寄せて群にする

集まっていくコトバの群をさあっと眺める

似ている群れと群とを集め玩具で遊ぶ子のように島々を築く

島々に小見出しの表札をつける

似ている島群と島群を集めてその群島に大見出しの表札をつける

大見出しと大見出しとを円で囲んで題名をつける

題名が決まったら

円で囲んだ島群と島群を

起承転結に従って配列してみる

きみの好きな

帰納的な整理

演繹的な収束

だが表札づくりでも起承転結の配列においても

アタマで理屈を立て整理してはいけない

ただ降りてくるコトバを記録する

きみは考えるのじゃない

道路工夫のように

片づけるだけ

自分を受信機にする

きみがコトバに選ばれきみを通してコトバが

世界に現われてくるように

思考で封じていた自分をひらき

惑星の脳漿と身体を澄みわたらせ

届いてくるコトバの贈りものを受けとり

速記者のように

猛烈なスピードで桝目に埋めていく

それでいい