【第1章】先んずれば相続税を制す

時間が経てば経つほど面倒くさくなる共有名義

前項で説明した通り、不動産の共有はトラブルのもとになるので、できるだけ避けるべきです。しかし、資産が不動産だけしかない場合は、共有名義で相続するしか選択肢がない場合も想定されます。

もちろん、相続を放棄することも選択肢としてありますが、人間もらえるものはもらいたいと思うのが心情でしょう。

相続人全員が元気で、皆さんが自活できている場合は、手を付けずに放っておいても、大して大きな問題にはなりません。但し、固定資産税は毎年かかります。

今、全国で空き家問題が話題になっていますが、空き家問題の本質はこの固定資産税にあるのです。家はたとえどんなにボロボロになっていても、処分せずにそのままにしておいた方が税金は安くすむのです。

居住用の住宅の場合、床面積のうち200㎡以下の部分に関しては、土地と家を合計した税額を1/6に減額してもらえます。

一方、家を壊して土地だけにした場合、地域にもよりますが、現在払っている固定資産税の約3.5倍に納税額が増えてしまうのです。

だから、だれも家を壊さないのです。これが空き家問題の根本原因です。

共有名義で不動産を相続した場合のケースに戻します。最初に相続した相続人全員が健在のうちは、固定資産がかかるくらいですが、時間が経って誰かが亡くなると問題はもっと難しくなります。

その亡くなった方にも不動産しか相続資産がなく、その配偶者と子供が相続しているケースがたくさんあります。

そういうご家族の持っている不動産の登記簿謄本を見ると、一つの土地建物に、10数人の相続人の名前が列記されているなんてケースも珍しくありません。

こうなると、売却するのも一苦労です。

不動産の売買契約の際には、名義人全員に戸籍謄本、住民票、印鑑証明などの書類を持参の上、一堂に会してもらい、署名捺印をしてもらう必要があります。そうでなくては不動産の売却はできないのです。

どうしても契約の場所にくることのできない人は、委任状を作成し代理の人に替わってもらうことも可能ですが、前述の書類は揃えなくてはなりません。

親せきといってもあまり親しくない人もいるでしょう。しかし、そのあまり親しくもない親せきとも日程調整をしなくてはいけないのです。

仮に一人でも海外に住んでいる人がいる場合はもっと大変です。現地の領事館に行ってサイン証明書や在留証明書を手配し、日本に来てもらわなければなりません。

売買契約を結ぶ前には、売買金額も決めなくてはなりません。いくらなら皆が納得するのか、この調整は簡単ではありません。

特に10何人も名義人がいる場合、持ち分によって金額の配分は違いますし、一人当たりが受け取る金額が少なくなってしまうことも起こりかねません。

そうなると、時間とお金を使って契約場所までいくのがバカバカしいと、協力を拒む人が出てきたり、もめることは必至です。

調整を誰が中心になってやるのかも問題になります。うっかり手でも上げようなものなら、「どうせあなたが一番多くもらうんでしょ?」などと言われ、皆さんのやっかみの対象になってしまいがちで、持ち分通りの分割をしたとしても気持ちよく終われることは稀です。

このように、不動産の共有は面倒くさくなることが必至なので、皆さんには早めに協議をすることを勧めているのですが、日々の仕事が忙しいなどを理由に、後回しにされてしまうことが多いように思います。

中には相続税のことを勉強されていて、後回しにすればするほど物事が複雑になってしまうことに気づかれる方もいるのですが、他の相続人の問題意識が低く、話し合いにならないということも耳にします。

多くのご家庭では、被相続人となるご両親は自分たちが残した財産を、子供たちに仲よく分けて欲しいと思っています。

しかし、事前に調整しないまま、子供たちの代にまかせてしまうと、相続が原因で仲が悪くなるという皮肉な結果を引き起こすことにもなりかねないのです。

※本記事は、2018年7月刊行の書籍『「金融大工」が知っている 一番わかりやすい相続対策』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。