夢が記憶と関連があるという説は、昔からいろいろあります。精神分析学で有名なジークムント・フロイトの『夢判断』では、夢は無意識的な記憶からきている願望であると記されています。

また、ノーベル賞学者のフランシス・クリックは、眠っている間に記憶の取捨選択がおこっているという説を提唱したそうです。最近の研究では、睡眠によって記憶が定着したり、逆に消去されたりすることがわかっています。そして、「レム睡眠」と呼ばれる、夢を見ているとされる時間帯には、脳の海馬や扁桃体などが活性化されているそうです。

海馬は記憶の中枢、そして扁桃体は不安や好き嫌いなど情動に関連した部位です。もしかすると睡眠中に意識的や無意識的な記憶をまとめてフィルターにかけ、長期記憶に残すものと消去するものの選別を行っていて、その中から意識していなかった記憶がすくい出されるのかもしれません。

さて私の対策としては、日頃から少しでも気にかかったことは、できるだけその場で解決するようにし、夜まで持ち越さないように努めています。

検査や治療に関する知識を整理したり、自分なりの方針を明確に確立したり。また患者さんやその家族に適切にアドバイスができるように、医療だけでなく介護分野のことも頭に入れたり。

たぶん何ごとでもそうでしょうが、1件解決すれば、類似事項に関しては次から前もって対処できるようになります。特に医療に関しては、SF小説で起こるような奇想天外なことはまず起こりません。人間の身体に起こることは限られています。

とは言っても、最近の新型コロナウイルスのパンデミックに関しては、誰にとっても予想外の状況になっていますが。私も「夢のお告げ」で鍛えてもらったおかげで、最近は夜中の悩ましい時間をあまり持たずに済んでいます。

※本記事は、2021年6月刊行の書籍『認知症のリアル 時をかけるおばあさんたち』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。