第二話  東日本大震災物語

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小早川さんの感動的な激励野球教室と副市長の極旨の手打ちうどんを味わった2日後、私は一生忘れることのできない場面に遭遇するのである。

この日、私は花咲徳栄高校の部活動の生徒約150人を引率して、避難生活している旧騎西高校の体育館内にある全国からの支援物資の移動や、清掃のボランティアを加須市と協力して朝から行っていた。

そこへ、天皇、皇后両陛下がこの旧騎西高校を訪問されたのだ。

皇居から高速道路の東北自動車道・加須インターを降りられ、旧騎西高校までの信号はすべて青信号になり、スムーズに進むのである。

たまたま私の次女が通りかかった両陛下の車から、皇后陛下が手を振られ、目があったことを興奮気味に話していた。

前のナンバープレートに菊のご紋を着けた黒いお車が、旧騎西高校前のロータリーをゆっくりと時計回りで入ってきた。

私は報道関係者のエリアのところに立ち、両陛下をお待ちしていた。

思えば、2007(平成19)年、春の全国選抜大会で、日本三景の一つである天橋立に行った翌日のこと、夢の中に昭和天皇が現れ「頑張ってくださいね」と励まされた。

そのことを当時の花咲徳栄高校女子硬式野球部員に告げたところ、見事その大会で初優勝した。そのときのことをふと思い出していた。


 
天皇陛下がお車から先に降りられ、そのあとに皇后陛下が降りられた。数歩歩かれたのち天皇陛下が、混乱を防ぐために設けられたロープで仕切られた場所にいた双葉町の人たちに向かって、右手を挙げて手を振られた。

その瞬間、

「うわあー……」

という大きな歓声と拍手が上がった。

この歓声は、人生の中で聞いた歓声とはまったく違っていた。人気スターの登場、オリンピックや全国大会優勝等の祝福する際の歓声は何度も体験したことはあったが、このたびの天皇陛下に対する歓声の声は言葉に言い表すことができなかった。

その瞬間を私のデジカメに収めることができた。日時は平成23年4月8日午後3時15分と写真の右下に表示されていた。

私の目の前を両陛下が通られ、約480人が生活する第一体育館へご移動され、隣との間仕切りもなく、布団と布団の間で体を休めている町民に、両陛下は膝をつき、時には手を握りしめて、激励のお言葉をかけられていた。

そのお言葉をかけられて、大粒の涙を流す町民も多かった。

―― 両陛下から放たれているのこのオーラは、一体、何なんだ!

※本記事は、2017年12月刊行の書籍『女子硬式野球物語 サクラ咲ク2 旅の果てに』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。