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夢解き

対する私は、自分で言うのもなんだが子供の頃から目立っていた。

身長は一六七センチ。栗色の目と髪は生まれつきだ。はっきりした目鼻立ちで、少しファンデーションを塗っただけで厚化粧と陰口を叩かれる。(結局何をしても叩かれるのよ。っていうか叩きたいだけなのよね)ということに気がついたのが高校の頃だ。

女友達は少ないが、男友達は多い。派手な顔立ちに、腰まである栗色の波打つ髪が我ながらよく似合う。「気が強そうだね」と言って敬遠されることもあれば、「そのくらいの方が俺の好みだよ」などと言って近づいて来る男も多い。目立つだけでなく、いかにも気の強そうな女を「従えて」六本木辺りを歩くのは、男の虚栄心を満足させるのだ。

だからせいぜい、その虚栄心を利用して、一番マシな相手を選ぼうと思っている。

(どうせ男なんて結婚したら殆ど家に居ないんだから)

だったら経済力のある男と結婚して、生活の質を高く保ち、お互い好きなように生きればいい。私は父のことを、自分の養育費をくれる人なのだと割り切っている。子供の頃からそうやって何でも割り切って考える癖がついている。父が二件ほど、「別宅」を持っているのも、我が家を保つのに必要なことであると、私は小学校に上がる頃には了解していた。父が家に居ると息が苦しいので、父が留守にすることはむしろ嬉しいことだった。

「なほ子ちゃん、静真さんのことを悪く言わないで。仕方なかったのよ。彼はカードを読んだだけだし、それ以前に私になんか興味が無かったんだから」

「あ、ごめん」

静真が父に似ていると分かってからは、ますます静真のことが癪に障るようになり、つい悪口ばかり言ってしまった自分に気づき、私は急に気恥ずかしくなった。

「でもニホちゃんは、前にも神﨑さんと話したりしたことはよくあったの?」

「ううん。前に一回だけ友達の紹介で占ってもらったことがあるだけ」

「それだけ? で、この間いきなり相性を占ってくださいなんて言ったの?」

大した度胸だと私は呆れた。

「一目惚れなの。でも、希望は無いなってすぐに分かった。だから、さっさと決着をつけたかったの」

「それにしたって、あんな大勢の人の前で自分との相性を占えなんて、チャレンジャー過ぎるでしょ。第一、希望が無いなんてどうして分かるのよ」

私なら時間をかけてモノにするのに、と思いながら私は訊いた。

「だってあの人、人間じゃないから」

「はい?」

可哀想にニホちゃんは失恋のショックでとうとう変になったのかと思うと同時に、納得できるような気もした。あの、浮世離れした白い細面の男。

「羽でも生えてるっていうの?」

「そうよ。私達とは違う生き物。だからもういいの」

そう言ってニホは教室から出ていった。