2階の奥の小さな部室に案内され、長時間の取り調べを受けた。客観的に見て極悪非道の事件であり、バックに暴力団がいると思われていたらしく、一斉に家宅捜索を行ったとか。事件の前の日の打ち合わせの時、E子に与える罰をファミレスの紙ナプキンの裏に3つ書き、そこから自ら罰を選ばせたのだが、それも没収された。

1.自ら命を絶つ

2.全裸で山に捨てられる

3.銀行口座に毎月現金を振り込む

取り調べではしつこく誰の考えだ、と聞かれた。私が考えた、と言っても子どもが思いつくような内容ではない、となかなか信じてもらえない。どうやら私は変に頭がきれるところがあるようだ。

一緒に計画した友達数名も同時に捕まったが、私の取り調べには課長クラスであるタヌキがついた。VIPだな、とちょっと嬉しかった。私が簡単には口を割らないことも察している様子だった。そのせいか、変に私を見下すこともなく、タヌキは紳士的に向き合ってくれた。

私も自分が間違ったことをやってないと思っているところもあり、誤解がないように少しずつ話し始めた。条件を書いた紙ナプキンを見せられ、事件前後の状況を説明した。1と2の罰は選ばせる気がなかった。3を選ばせるため、絶対選ばないであろう2つを書いただけだ。

でもE子は何を思ったか2を選んだのだ。この時の彼女の心は今になっても読めない。混乱していたのか、自暴自棄になっていたのか。季節は冬。こんな時期に山に捨てたら、本当に命の危険があるだろう。少々焦った私は、誘導して3を選ばせた。私はタヌキにありのままを伝えた。

話が軌道に乗り始めた頃、タイミング悪く、人間的に浅そうな若手の警察官、キツネが入ってくる。

「こいつが主犯か。なんでこんなことしたんね」

私は口をつぐみ、彼をにらみつけて一言も発さなくなった。そこでまたタヌキの出番だ。お前は引っ込んでろ、と言わんばかりの目でキツネを別の場所においやった。

「昼ごはんは何がいいかね」

「カツ丼!」

タヌキは空気を変えようとしたようだ。取調室では自動的にカツ丼が出てくるシステムかと思っていたらどうやら違うらしい。きちんと支払い請求までされた。あれはドラマの世界だけなのか。それとも私が口を割るのが早すぎたか。ちょっとがっかりだった。

その後も夜まで取り調べは続いた。やっと終わった、と警察署の外に出ると、思いがけず母とりゅう君が待っていた。

「あなたがついていて、何でこんなことになるの!」

母が彼にどなった。

「申し訳ありません」

涙でぐちゃぐちゃな顔になりながら、彼は母に深々と頭を下げ、その場に泣き崩れた。その姿を見て、自分が侵した罪が、私が信頼し、私を信じてくれている人たちを裏切る行為だったことに、ようやく気づいた。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『腐ったみかんが医者になった日』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。