【関連記事】「病院に行って!」背中の激痛と大量の汗…驚愕の診断結果は

事件

クラスで事件が勃発した。

よく一緒にいたE子が、さんざん辞めろとアドバイスしたのにもかかわらず、またキャバクラで働き始めた。彼女は病的なくらい男が必要で、同時に3人ほどつき合っていた。曲がったことが許せない変な正義感が、驚くほどの怒りとなって襲いかかった。

今考えると恐ろしいが、彼女を殺してしまおうか、とさえ思った。しかし完全犯罪をやれるだけの知能は、その時の自分にはなかった。脅すだけにするか。私は得意だった精神的に相手を追いつめる手法で、弱みをにぎり、自ら選ばせる形で彼女から毎月現金を振り込ませることにした。

しかし私の作戦は甘かった。

「午前7時3分、容疑者宅、突入!」

早朝からインターホンが鳴り、突然スーツを着たおじさんたちがゾロゾロと家に入ってきた。当時住んでいたりゅう君の社宅と実家に、同時に家宅捜索が入った。やってしまった。捕まることが怖かったのではない。自分の詰めの甘さに自分に対して失望したのだ。

どうやら彼女は、振り込みの「契約」をしたその足で警察に駆け込んだらしかった。私はパジャマ姿だったので、とりあえず私服に着替える時間をもらい、連行された。確かダボダボのスウェットとキティちゃんのサンダルにしたと思う。

警察署に着き、車のドアを開けようとしたが開かない。こうやって犯人が逃亡するのを防いでいるのか。無線の声や車内の様子に興味津々だった。私は好奇心旺盛だったので、そんな状況だろうと初めてのことには何でもわくわくする。

警察署の中を歩いていると、入口に座っている警察官たちが、こいつが犯人か、と言わんばかりの目でこっちを見ている。軽蔑の目、同情の目。苦労知らずのお前たちに何がわかる。私が睨み返すとすぐに目をそらしていた。当時の私は鋭い目をしていたようだ。けんかではまず目で相手の戦意を喪失させるのが王道であり、目の鋭さはいばらの道を歩んでいく途中で備わっていった。