そんなある月曜日の夜のこと、孝雄がいつものようにカップ麵を二階で食べてから、シャワーではなくて、めずらしくお風呂に入っていたのだが、浴室から、唸(うな)るような「あーっ!」という怒鳴り声が聞こえてきた。

その後、濡れた服を絞ったのを持って出てきたところを見ると、こんなことは初めてなのだが、お風呂場で、自分の服を洗濯していたようだ。

いわく、「俺の稼いだ金で飯食って風呂も入りやがって! それでいて家のことは何もしてくれてないし、俺が食うのはカップ麵ばっかりだ! 毎日三食カップ麵を食ってみろ、体調がおかしくなるのも当たり前だ。お前もカップ麵で一日過ごしてみろ!」

(ああ、これを言うために、わざわざ、お風呂に入りながら洗濯していたのか……)と、得心(とくしん)したと同時に、「体調がおかしくなるのも……」という部分で思い当たったのが、先日受けた健康診断の結果が、本日郵送されてきていたことだった。血液検査か何かで引っかかったのかな……。

そして、「日曜くらい晩御飯をつくれないのか!」って……昨日のこと? 言葉にはしていないけど、昨日の日曜日も御飯は用意していました……っていうか、平日も毎日、言われればすぐに出せるように用意してあります! よく考えてほしい、どうしてこんな状況になっているのかを。教えてほしい、本当にすべて私の責任のように言ってくるこの人は、いったい、なんなんだろう。

「今から帰る、御飯をよろしく」って一言連絡してくれれば、いつでも用意できるのに……本人次第なんやけど……。でも一言、言うとしたら、本当に一日三食カップ麵だけを食べていて、こんなハードな生活を送れるとは思えない。以前と比べて痩(や)せ細ったわけでもないし……。

あの警告メールを送ったことに始まった一件で懲りるどころか、まったく改めようとせず、どんどん深みにはまっていっている気がしてならない。私のことを悪いと言う前に、自分の行動を改めてほしいと思う。

(といって、これから改めてもらっても、もう私には無理やけど……)

六月十二日(火)

土砂降(どしゃぶ)りの中、午後九時三十分頃ご帰宅。スケジュール帳によれば、今日はゴルフだったはずだが……。夕食がまだのようだったので、「食事、用意しますか?」と、こちらから声をかけてみたのだが、洗い物をしながら聞いたのが気に入らなかったのか、何かぶつぶつ言いながら、カップ麵にお湯を注いで二階へ上がっていった。

六月十三日(水)

朝八時にご出勤。真夜中を過ぎて、午前二時の時点でまだ帰らず。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『夫 失格』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。