実は私の知っている医師が患者から「イエス・バット」のゲームを仕掛けられて困っていました。その患者が定期的に通院してくるのですが、何をアドバイスしても言い返してくるので、その医師はその患者と顔を合わすたびに大きなストレスを感じていました。

例えば、医師が「ストレスが原因ですので、2、3日休暇を取って旅行にでも行かれたらいかがですか」とアドバイスすると、患者は「仕事が忙しくて、なかなか休めないんです」と否定し、さらに医師が「それでは気分転換に、趣味に打ち込んでみてはどうですか」と言うと「これといった趣味もないんです」とまた否定するといった具合です。

この結果、普段は温厚な医師が、その患者が診察室に入ったときはいつも、イライラして廊下に響き渡るような大声で怒鳴り散らすというありさまでした。結局、その患者の担当を別の医師に代わってもらって、やっと安堵できたという次第です。

この「イエス・バット」というゲームでは、そのゲームを仕掛ける理由は一つだけではなく複数存在します。このため、状況に応じて、その理由を判断していくことが必要になります。

この事例ですと、上司は自分を権威づけるために、私の言うことにまったく耳を貸さなかったのです。耳を貸さないことで、自分の意見や判断は絶対的なものだということを誇示しているのです。否定することが目的ですので、この上司に何を言っても否定されるだけです。

従って、権威づけを理由にこのゲームを仕掛けられたら、対処の仕様がありません。冷たいような答えになってしまいますが、この人はこのような形でないと自らを権威づけることができない、器の小さい人だと思って、相手にせず早く忘れてしまうことが肝要です。

ただし、私のように理不尽に最低点をつけられるといった被害を受けた場合は、しっかりと身を守ることが必要です。私の場合は、面接時の評価はすでに決定されたもので、システムとして反論をすることができなかったということもあって泣き寝入りをするしかなかったのですが、いまは時代が違いますので、上司のさらにその上の上司に、はっきりとクレームを申し出ることが必要です。

そのとき、得てして水掛け論で終わってしまいますので、上司に指示されたときには証拠となるようにメモをとるとか、実績報告などでは意図して、この仕事は何月何日の面接時の指示によって行っているといったことを記載しておくといった配慮も必要でしょう。

また、これはすべての事例に共通して重要なことですが、ゲームが行われるには、さまざまな理由がありますので、それぞれの理由に応じた対策を取ることが必要なのです。その上で、自分の上司が、こういったゲームを仕掛けてくる人物かどうかを判断して、仕掛けてきそうな人物だったら、先ほどのメモや報告時の確認といった予防策を講じることが有効なのです。