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事故

それはとても寒い冬の日で、ホーム宿直の早朝だった。ある利用者さんを一人連れてドライブに行くという業務でのこと。細かく言うと、その彼はとても早起きで、施設の近くの家の庭を荒らしてしまうのだ。夜勤明けの時間帯なので、職員が彼の行動を把握しきれず、早番が来るまでホーム宿直者がその人をドライブに連れていくというわけだ。

僕はダムの道に沿って公用車を走らせていたが、凍っているのか朝日が当たって道がキラキラしている。車はみんな徐行並みのスピードで走っていて、僕もそれに倣った。しばらくすると、下り坂で前の車と間隔が狭くなったのでブレーキを踏むや否や、公用車はグルンと180度回転。反対車線に飛び出したが、ハンドルも取られて制御不能だった。

クルクルと車は回り続け、壁にガッシャン! ぶつかった勢いで運転席のシートは倒れ、僕も倒れた。胸や首を痛めていたが、なんとか施設に電話。

「ダムの道沿いで事故りましたー」

と言ってグッタリしていると、誰かが通報してくれたのかお巡りさんが来て、僕に名前と職場の電話番号を聞いてくる。僕は公用車にある運転業務日誌をお巡りさんに渡して、

「ここに書いてあるから」

と教えてまたグッタリした。

その後、救急車で病院に運ばれてCT検査などをしたけれど異常なしだった。動けなかったのは衝撃の一時的なショックからだと医者が言っていた。

大破した公用車のレッカー移動や警察の聴取、同乗していた利用者さんが軽傷だったのでその家族に謝罪の電話など、事後処理が大変だった。また、総務課長がくの字に曲がった公用車を見て激怒したので、それをなだめるのに大変だったとY支援部長が言っていた。

一段落つくと、クビにコルセットを巻いた僕に園長が始末書と労災の紙を渡して

「お大事に」

とニッコリ微笑んだ。

こうした一連の出来事によって、僕には「不幸の問屋さん」とか「不幸の畑中さん」などといった不名誉な渾名がついてしまった。

「僕こんなことばっかりですよ」

とY支援部長に嘆くと、

「まあ、人生一度きりだし、何でも経験だからいいじゃないか。ハハハ!」

と笑われ、釣られて笑ってしまう僕がいた。