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人間の宿命、腰痛とその対策

人類はほかの哺乳類と同様本来4本足歩行の動物でしたが、そこから進化して2本足歩行となったために両手を自由に使えるようになり、道具を使って文明が発展したと言われています。けれども2本足歩行となったがための弊害もあり、その一つが腰に上半身の負担がかかるようになったための腰痛です。実際、日本人で腰痛を持っている人は3千万人もいて、そのうち85%は原因が特定しにくい非特異的腰痛だということです。

私もこの冬の間、特に腰に負担をかけたという心当たりはないのに、しばしば腰に軽い痛みを感じることがありました。痛みを感じるのは、身体を動かしたりひねったりする場合で、場所はその時によって右腰だったり左だったりします。

そして、大抵は半日から1〜2日で良くなります。痛みの程度は軽く、しばらくすると良くなるのでそのままにしていましたが、一度病院で検査したほうが良いのか、また予防するために普段運動などしたほうが良いのかなど疑問が出てきました。

NHK健康チャンネルによると、腰痛の危険度としては、「身体を動かした時だけ、腰だけ痛む」場合には、当面の危険はないそうです。対処法としては、①適度な運動を行う、②できる範囲で通常の生活を続ける、③ストレス対策を行う、がすすめられています。

痛みがある場合には、じっと安静にしているより、適度な運動を行ったり、できる範囲で通常の生活を続けることが大切だそうです。逆に危険度が高いのは、「じっとしていても痛む」「背中が曲がってきた」「お尻や脚が痛む・しびれる」「脚のしびれにより長く歩けない」などの場合で、脊椎や内臓の病気や神経の障害の可能性があるので、医療機関を受診する必要があります。

腰痛予防運動に関しては、私はこれまで、腰回りの筋肉を鍛える運動、すなわち腰の曲げ伸ばしやひねりに直接関係のある筋肉を鍛えることだけが有効だろうと思っていました。ところが、実は腹筋を鍛えることこそ重要であると、今回初めて知りました。そして、腰につながっている横腹筋や多裂筋といったインナーマッスルを鍛えて、腰に良い姿勢を保つことも大事なようです。

さらに腰回りを動かす簡単な「これだけ体操」というものもインターネットで見つけました。これは、腰を前や後ろ、そして左右に押しながら少し曲げる体操で、どこでも手軽にできます。また、この体操で、手で腰を一方向に押して違和感や痛みを感じれば、自分でもどこがどの程度痛いのかがわかるので、腰痛の程度や回復の程度も自己判断する目安にもなりそうです。

最後に、腰痛対策として、ストレス対策が挙げられていましたが、これは痛みを感じるメカニズムと関係があります。痛み刺激を受けると、脊髄から脳内の視床へ、そして大脳皮質へと刺激が伝導され、痛みを感じます。ところが、神経系は痛みを感じるだけでなく、実は、そのあとに痛みの抑制機構が働き、いつまでも痛みを継続させない仕組みにもなっているのです

  ※  痛みと疼痛の基礎知識ー痛みの学説と電気刺激治療の歴史小山なつ 理学療法学 40(8):726-731,2013

具体的には、ドーパミンやオピオイド、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が放出され、疼痛(とうつう)経路が遮断されます。確かに、痛みを感じるのは生物の生存にとって必要なことでしょうが、いつまでも強い痛みを感じていると、ほかの行動ができなくなります。とても合理的な調節機構が備わっていると感心してしまいます。

ただし、実際に強い痛みを感じる場合には継続することが多いので、痛みの抑制機構がどの程度働いているのか、どうしたら確かめられるのか、という疑問も残ります。

さらに、痛みの感じ方には、心理的な状態も大きく影響します。慢性的にストレスやうつ、不安を抱えていると、上に述べた痛みの抑制経路が抑えられてしまい、ドーパミンなどが放出されにくくなってしまいます。その結果、痛みをより強く、より長く感じるそうです。そこで、そういったストレス対策として、ストレスとなっている原因を除去する、楽しいことを考えたり実行したりする、などが効果的です。

ただし、慢性疼痛を訴える方は、「いつも痛い」、「ずっと痛い」と思い込んでしまっているので、なかなか気持ちを変えさせることは困難だと思われます。