男女格差の是正

日本社会は男女格差が大きく、男尊女卑の強い社会である。世界経済フォーラム(WEF)の2019年の「ジェンダー・ギャップ指数」は、日本は153カ国中121位である。女性の非正規雇用は全体の過半数を超えている。

離婚すれば、養育費の未払い率は8割を超え、ほとんどの母子世帯は元夫から養育費をもらえていない過酷な現実がある。多くのシングルマザーが、社員として働ける可能性が比較的高い仕事である介護職は、圧倒的に女性の職場であるが、賃金は高くない。

このため、シングルマザーたちのセーフティネットとなる反面、低賃金、違法労働を強いる等、女性の貧困を牽引する危険も併せ持っており、離職率が採用率を上回っている。

また、警察庁によれば、2019年度の性風俗関連特殊営業の届出数(営業所等数)は、3万1956件(「令和元年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯の取締り状況等について」)であるが、BIによって、一般女性の可処分所得が月数万円増えたり、現在の男性と同等程度に実質賃金が向上すれば、風俗業界で働く女性は大幅に減少する可能性がある。

内閣府の「男女共同参画白書平成30年版」によれば、女性の就労が進み、戦後主流であった専業主婦世帯は、1980年の1114万世帯から2017年には641万世帯に減少したのに対し、共働き世帯は、614万世帯から1188万世帯へと増大した。

それにもかかわらず、「家計の主な稼ぎ主は男性であり、女性はその補助的な役割を果たす」という古い価値観から抜け切れていない。

女性の社会進出は、生活費を稼ぎ、あるいは自己実現の機会を提供するだけでなく、労働力不足が緩和されたり、年金を支える働き手が増えたりするという意義もある。

育児休業は、男性より賃金の低い女性が取るケースが多いが、国立社会保障・人口問題研究所の「第15回出生動向基本調査」(2015年)によれば、第一子妊娠前に非正規社員だった場合、育児休業を利用して就業継続した割合は10%に過ぎない。

育児休業を取った女性は、乳児と24時間向き合う母親として育児専業化されてしまう。産前は対等だった夫婦の関係が、1年の育休で変わり、家庭内で役割分担が固定しないようにするには、父親の育休取得を義務化すべきである。

2019年度の育休取得率は女性83.0%、男性7.5%である。ただし、男性の育休が「取るだけ育休」にならないように、炊事、洗濯、ごみ出し等の家事や乳幼児の入浴、おむつ替え、ミルクづくり等の育児に関するリテラシーを身に付けてもらわないと、かえって妻の負担になる可能性もある。

そして、このような家事、育児に関するリテラシー獲得を目指す取組みは、シングルファーザーになった場合にも役立つ。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『ベーシックインカムから考える幸福のための安全保障』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。