捜索には、非番だった職員数名とY支援部長も駆けつけてくれた。辺りは真っ暗で、いなくなった彼は懐中電灯なんか持っていない。事故にでもあったら大変だと心配と焦りが高まる。

この買い物した場所からホームまでは10キロメートル近く離れていた。徒歩ですぐにホームに帰り着くのは考えにくい。となるとまだ歩いている途中だ。

利用者さんがいなくなると、できる限りの職員が探しに出て、30分おきくらいに定時連絡を施設にする。しかし、何の連絡もないままかれこれ3時間くらい経った。お店も灯を消して閉店してしまうが、ありがたいことに心配したそこの店長さんだけ残ってくれていた。

そんな矢先に、発見保護の連絡がY支援部長の携帯にあった。僕はひと安心し、残っていてくれている店長さんに報告とお礼を伝えようと暗闇の駐車場を走って行った。すると突然、凄い勢いで走っていたその左脚の膝下部分を固い何かが激しく叩いた。

駐車場を閉鎖する鉄のチェーンだ。真っ暗だから闇に紛れてチェーンが見えず、ドテンと思いっきり転んで胸も強く打ってしまった。起き上がり走ろうとすると、左脚がカクカクして走れない。それに何か生温かい物を感じる。

着ていたジャージの裾を捲ると、膝下はバックリと割れていて、血がダクダクと流れていた。脚を引きずりながらY支援部長のところに行き、へたり込んだ。「何があったんだ」と不審がるY支援部長にキズを見せた。Y支援部長は目を背けて、

「病院、病院行け!」

と叫んだ。ホームの宿直は俺がやるから病院に行ってくれと。

側にいた非番の職員が僕を車に乗せてくれて、近くのK総合病院へ行った。ちょうど外科の先生が当直で、

「何やったらこんな傷口になるの?」

と不思議がる。酷い傷で、脂肪の粒が傷口の周りに付着しているという。外科の先生はそんな脂肪の粒や深い傷に溜まった血の塊などを丁寧に取り除き、麻酔をして傷口を縫っていった。計24針だった。ついでに胸も痛くてレントゲンを撮ったら肋骨にヒビが入っていた。

利用者はいなくなるし、職員には迷惑かけるし、転んで大怪我するしで、この日は本当に参った。2階建てアパートの2階に住む僕は、松葉杖で2階に上がるのも一苦労。翌日、Y支援部長から電話。

「ハイ、労災ね」

暗闇の鉄のチェーン恐るべし! トホホ。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『僕は不真面目難病患者 ~それでも今日を生きている~』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。