また、鳩が死んでいる

第四日。

午前中にあの肥った老婆が小柄な老婆を従えてやって来た。ひとしきり悪態をつく。ガードマンなんて必要ないのだから、一日も早く辞表を出せと言う。役所にも、あのガードマンを早く辞めさせるよう、陳情したと言う。

「ちゃんとしたガードマンなら置いてもいいが、あんたは駄目だと言っておいた。覚悟しときな」

憎々し気に言って公団住宅の方へと帰っていった。小柄な老婆が後を追う。不愉快でたまらないが、我慢するほかはない。今のところ大村とこの老婆の二人だけだから。

しかし、この二人のクレームのつけ方はどうも合点がゆかない。私と彼等と何かトラブルがあって、その上でのクレームではなく、のっけからの悪態だ。そして私に辞めろ辞めろと言う。

では私以外の警備士ならよいのか、それとも警備士を置くこと自体に反対しているのか。よくあるクレーマーだから、不愉快だが我慢すればよいと思っていたが、もう少し深く考える必要があるかも知れない。

公園課の方にも彼等が何か言って来たかどうか、小原係長に尋ねてみよう。パトロールを開始する。いつになく多くの鳩が下りてきて私の周囲を歩き廻る。

この様子では間違いなく餌をやっている人もしくはグループが存在する。一体、いつ、餌やりをしているのだろう。

十時半頃に駅前交番の飯村巡査がやって来た。相変わらず言葉づかいが丁寧な好青年だ。

「公園へ子供を遊ばせにくるお母様方が、野原さんがパトロールをしているのを、大変喜んでおられます。安心して子供達を遊ばせられるって」

「そうですか、それは有難いことです」

「本当は自分達がもっと綿密に巡回しなければいけないんですが、いろいろと用事がありまして……」

しきりに恐縮するのを慰めた。この青年は間違いなく良い警官になるだろう。しかし、一方では日本の警察のもつ独特の構造にもみくちゃにされ、ほうり出される姿も浮かんでくる。純心で使命感に燃えている若い警官に試練が待っているのだ。

大村や肥った老婆がどこかで見ているかも知れないので、美代子シェフの店へ行くのに十二時丁度に公園を出た。店では三人の客が食事をしていた。私は今日はかたやきそばを頼んでみた。

美代子シェフは目の前で麺を揚げて、一方で上にかける具をつくり、熱々のものをだしてくれた。実に美味しい。こうなったらメニューにあるものを全部味わってみよう。昼だけではなく、仕事の終った後に来てゆっくり食べるのも良いだろう。

午後は仲良くなったベビーカーの母親達とお喋りした。この日も何事もなく終った。制服姿のガードマンがパトロールしているということが、少なくとも何等かの抑止効果になっているのか。

雨が降らないのは有難いけれど、陽の落ちるのはますます早くなり、北風も強くなってきている。

第五日。

事件が起っていた。