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敬一さん、脳血管障害で倒れる

5月も半ばが過ぎ、敬一さんは忙しい日々を送っていた。ゴールデンウイークに妻の和子さんと一緒に、娘二人と孫の計5名で東京の休日を楽しんできた。

久しぶりにくたびれたなあと思ったのも束の間、東京から戻ってきてすぐに、ボランティアグループで発行している会報の原稿依頼が舞い込んできた。たった10日間でボランティア活動記を書いてほしいという内容だった。早めに手をつけなければと思いつつ、日々のあれこれに紛れてしまい、その締め切りが明後日に迫っていた。

その日は午後11時まで原稿を書いていた。パソコンを打つ手の感覚が何かおかしいなと思っていたが、疲れでも残っているのかと、あまり気に留めないでいた。眠くなってきて、もう筆が進まなくなってきたので、予定より少し早く床に就くことにした。

ベッドに入ってから、しばらく経って、やけに頭が痛くなった。それにやっぱり右手がしびれる。隣でウトウトしていた和子さんを起こして、何か飲み物を持ってきてもらおうと思った。

「和子さん、和子さんちょっと起きてくれる? 冷たいもの何か持ってきてほしいんだけど」

そう話しかけると、

「まあ、今からですか。何がいい? 冷たいお茶でいいですか?」

お茶はあんまり飲みたくなかったけれど、こちらから頼んでいる手前、「ああ、それでいいよ」と張りのない声で応え、暗に他に何かないか訴えかけることにした。

「じゃあ、お茶を持ってくるね」

気持ちが伝わっていないのか、それとも気づいていないふりをしているのか、敬一さんは勝手にイライラしてきた。やっぱりジュースを持ってきてもらおう、そう思ってベッドから出ようとしたとき、右半身に衝撃が走った。そしてそのままベッドの脇に倒れる自分が、遠のく意識の中でかすかに自覚できた。脳塞栓という病気が敬一さんを襲ったのだ。