3 脳機能の改善作用

年をとると、記憶力の低下、認知や睡眠に関する機能低下、気分の低下などが起こりがちですが、PQQは以下の(1)~(5)のような効果があることから、「記憶能力の向上」や「識別能力の向上」など脳機能の改善作用があることが、ラットを用いた動物実験だけではなく、ヒト試験においても確かめられているのです。

これって、本当にすごいことだとは思いませんか。高齢化にともなって認知症発症者が急増している今日、PQQは大きな救いになると思います。

(1)神経への効果(神経成長因子の増強)

神経細胞は、刺激情報を体のすみずみまで伝達するために特殊化された細胞で、形態的には長い神経突起を伸ばしたものや、中には細胞体の直径の百万倍にも達するものもあります。

これらの神経細胞はいったん機能しはじめると自己分裂する能力を失ってしまい、死んでしまっても自己増殖によって補うことができないのです。そのため、これを防いで神経細胞の生存を維持するには神経細胞の成長や再生を促す物質が必要になります。その代表格が「神経成長因子」(Nerve Growth Factor=NGF)というタンパク質です。

神経成長因子とは、神経細胞に細胞の外からはたらく可溶性(水に溶ける)のタンパク質の総称で、PQQは神経成長因子を増やすだけでなく、神経成長因子を感じ取る受容体も増やし、神経成長因子の作用の感度も上げています。

神経成長因子を発見したのはリータ・レーヴィ=モンタルチーニというイタリアの女性科学者で、その功績により1986年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

神経成長因子(NGF)増強テスト

脳内に取り込まれたPQQは、NGFおよびその受容体の発現を増強し、脳機能の維持に作用するものと考えられています。

神経細胞を培養する際、「PQQを添加した細胞」と「添加しなかった細胞」を使って、神経成長因子の産出量を比較した実験では、PQQを添加した細胞が産出した神経成長因子の量は、なんと、添加しなかった細胞の約40倍も多いことがわかりました(下記の図表参照)。

 

神経成長因子の欠乏がアルツハイマー型認知症の原因の一つだといわれていますが、逆にいえば、神経成長因子が増えればアルツハイマー型認知症の予防にも役立つことが期待されます。

そういう意味でも神経成長因子の量を増やす効果のあるPQQは、今後ますます期待されます。

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『人生100年時代健康長寿の新習慣』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。