また、鳩が死んでいる

第三日。

ますます朝の冷えこみが厳しくなってきた。今日も外套を着て出勤した。

午前中は何事もなく終った。昼食は例の中華料理店と決めて、休憩時間をずらして行くことにした。

一時を廻って暖簾をくぐった。幸い客はいないのでカウンターに腰かけた。

「毎日お見えいただいて有難うございます」

丁寧に挨拶してくる。今日は半チャンラーメンを注文した。

調理している様子を見ると、チャーハンを実に丁寧につくっている。

味わい深い一品だった。醤油味のラーメンもさっぱりしていながら味は深く、細目の麺が本当に美味しい。

食べ終ってまだ客が来ないので、話しかけてみた。

彼女の名前は佐野美代子、二十三才。この店は彼女の祖父が長年経営していたのだそうだ。その祖父が昨年亡くなって、彼女の父は会社勤めを辞めるつもりはなく、店はたたむと言った。それを、私にやらせてと頼みこんで店を継いだのだという。

「おじいさんに教わっていたのですか?」

「正式には教わってはいません。信用金庫に勤めていたんですが、帰宅して、祖父が一人でやっているのが見ていられなくて、雑用を手伝っていました」

それなら今の味は、彼女の味覚とセンスがつくっているものだ。それと好奇心と……。

将来必ず繁盛する店になるだろう。

「あの、お客様が、『ガードマンさんに“シャタク”のクレーマーが因縁をつけていた。気の毒に』と言ってらっしゃいましたが……」

「シャタク、というのは?」

「あ、すみません。お客様がいつもそう呼んでいらっしゃるので」

これは聞いておこう。私がからまれているのは、例の肥った老婆と大村という男だ。彼等についての情報はどんなものでも欲しい。

「すみません。シャタクと言うのはひどい悪口なんです。全部が全部をひとからげにして言うのは、どうかと思うんですけど」

と、口ごもりながら話してくれた。