現在の高齢者は、高齢期を高齢者だけで二〇~三〇年過ごすことになった初めての世代であると述べましたが、子ども世代も同様に、離れて暮らす親が二〇~三〇年生き続けることを経験する初めての世代と言えます。

現在の高齢者にロールモデルがないのと同じく、子ども世代にもロールモデルがありません。したがって、離れて夫婦で暮らす親、あるいは一人暮らしをする親に対して、どのように対応すればよいのか、相当に迷いがあるのだと思います。

もっとも、長男だという理由などで地元で公務員になったり地元企業に就職したりして、実家にいたりその近くに居を構えているような人であれば、親の様子もよく分かっていますし、親の老後について一緒に考えることは、それこそ自分の運命だと思っているでしょう。

でもそうではない、実家から都会に出てきた人のうち多くの人は、親を放ったらかしにしているような罪悪感を持ったり、日々とても親の様子が気にかかっていたりしているはずです。

しかし、冷静に考えれば罪悪感を持つ必要はありません。介護保険制度が導入され、介護保険料を払っており、介護サービスを利用するのは当然に受益できる権利であるからです。

介護保険制度の導入前までは、介護は受益者の負担がない国による措置制度、いわば「施し」でした。「施し」は世間に申し訳ないし、恥ずかしいと思う心理も分かりますが、今は違います。負担しているのだから、堂々と受益すればいいわけです。

つまり理屈としては、「もはや子どもや家族が親の面倒をみる時代ではなく、サービス業者に任せればいい」となっているのですが、そんなにドライに考えるのが難しいのも実際です。