即ち、①着火手段として、ガスバーナーが良く使われる、②1分に1服程度のゆったりしたペースで煙をくゆらす、③店側の許可を得て、かつ周囲の客に軽く挨拶してから吸い始める、というマナーである。しかし、以上の面倒を掛けても、葉巻の齎すアロマは素晴らしく、かつ、驚くほどにカクテルと相性が良かった。

最後に、以上3つの中では最も入手しやすく、実用性も高い万年筆について触れよう。とは言っても、万年筆の扱いは、面倒だ。まず、キャップを回してペン先を出さなくてはならないし、割と頻繁にインクカートリッジの交換が必要になる。また、角度を間違えると妙な書き癖がついてしまう。しかし、私はそれでも万年筆を使う、それは、使い勝手では万年筆に肉薄する水性ボールペンでも、とても太刀打ちできない書き味を保証してくれるからだ。

現在2本所有し、細字をバイブルサイズのシステム手帳用に、そして中字をクレジットカードのサイン用と使い分けている。国産の手ごろな価格の万年筆だが、書き味は抜群だ。サイン用に徐にポケットから取り出すと、たいていの人が、驚きと羨望の眼差しを向ける。先にあげたいくつかの面倒を斟酌しても、極端に言えば、書くという行為への、厳粛な姿勢を思い出させてくれる。

以上、最大公約数として言えるのは、ダンディズムとは、「来るべき成果を夢見て、ある行為を取り巻く幾多の障壁を乗り越える、非効率ではあるが高貴な自己主張もしくは生きる姿勢」と定義できるのではあるまいか。

皆さん、効率性だけに振り回されずに、非効率でも、人生を豊かにしてくれる何かを見つけ、それを慈しみましょう。