私のストレス体験 ――心理学(ゲーム分析)との出会い――

では、「イエス・バット」のゲームを私に仕掛けることによって、A氏にどんな利益があるのでしょうか? 私は、買った本を参考にして考察を進めてみました。

A氏は私のいる会社に転職してきたばかりです。おそらく、新しく入った会社で「いいところを見せたい」と思い、張り切っていたのでしょう。幸いにも、配属された職場には、1ヵ月前に転勤してきたばかりで、職場にも仕事にも慣れていない私がいました。新しい会社で、何とかして自分の存在感を高めたいと願っていたA氏は、さっそく私に目をつけたものと思われます。

そして、取るに足らない些細なことをネタにして私を徹底的に否定することで、周りが私をダメ人間と思うように仕向けたというわけです。その上で周りに、ダメ人間の私とA氏を対比させて、A氏の価値を相対的に上げようとしたのです。

このように「ゲーム分析」を使って考えると、A氏の行動や狙いが、手に取るようによく理解できたのです。

それでは、A氏がゲームを仕掛けてくるのをどうしたら阻止できるのでしょうか? A氏の目的は、私を否定してダメ人間として位置づけることですから、否定するネタはどんな些細なことでもいいわけです。従って、私がA氏に「些細なことで否定をするのはやめてもらいたい」と言っても何の効果もなかったのは当然のことだったのです。

そこで、私はA氏のもう一つの目的である「周りに、私とA氏を対比させて、A氏の価値を上げること、すなわち、周りから、できる人間としてほめられること」という点に着目しました。もし、A氏にとって、「ほめられること」が不快になったら、私への攻撃は止まるのではないでしょうか?

そう考えた私は一計を案じました。彼が「ほめられたい」ならば、こちらは彼のやることなすことを徹底的にほめてやろうという対抗策に打って出たのです。