人が自分の目の前で亡くなるのを見た。

事切れる瞬間を。

僕にはなす術がなかった。

できたのは心臓マッサージと人工呼吸だけ。悔しくて、やるせなくて、悲しくて、涙が止まらなかった。僕は泣きながら、床の嘔吐物で汚れた敷物を洗濯機に放り込んで洗濯した。

しばらく時間が経つと警察官が二人やって来た。後で聞いたのだが、病院で医師が死亡確認したが不審死として警察に通報したのだという。警察官は

「なぜ死んだ」

と聞く。僕は数日前から熱があり対応してきたが、熱も下がらず最後はこのサロンで倒れ込んだ。嘔吐もしたと答えた。

警察官は、

「嘔吐物は?」

と聞いたので、嘔吐物は敷物に吐いたので洗濯したと言うと、警察官は突然眼の色を変え、

「なぜ洗った!」

と声を荒らげた。僕もめげずに、

「汚れた物を洗うのが仕事の一部です!」

と返答した。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『僕は不真面目難病患者 ~それでも今日を生きている~』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。