そして調停の第1回目が開催される日の朝になった。普段なら雄二がもう職場に出勤して家にいない時間帯だ。その日は台所のテーブルに私と雄二と孫の智也が一緒になって朝食を食べている。その状況を孫が見て雄二にこう言った。

「パパ、何で今日は家の中にいるの? 僕と一緒に学校へ行くの?」

「一緒に行ってあげたいけど、今日は違う場所に行かないといけないから智也とは学校に行けないんだ。ごめんね。それともう家を出ないと遅刻してしまうよ」

それを聞いた孫は、急いで準備をしてから元気良く登校していった。その後ろ姿を見送った雄二は私に向かってこう話しかけてきた。

「母さん、俺と直美姉さんが子供だった頃には、絶対に体験する事のできなかった穏やかな日常が現在にはあるのだね。今日は仕事が休みで、家族と過ごす幸せな日常を感じとることができる。だからこそ非常にはっきりと、あの男と一緒に生活させられた日々が異常だったのだと、改めて理解できたよ!」

そう言って、雄二は再び朝食を食べ始めた。終了後、普段着に着替えて裁判所に向かう準備をしている時に雄二が私に言ってきた。

「調停の話し合い、一緒に参加してみるかい?」

私はそれを聞いて、急いで外出する準備をしてから一緒に裁判所へ向かった。到着して自家用車の中で待っていると、姉が私達の車に接近して、一緒についてくるように指示してきたので3人そろって裁判所の中に入った。

姉が受付で手続きを済ませて、待合所で入室の呼び出しがあるまで黙って座っていると、しばらくして呼び出しがあり、私達は第1調停室に入室した。

中には中央部分に縦横の長さが違う長方形の机があり、入り口側と反対側は長さが短く、入り口側から見た左右は長くて、最大4人まで座れるイスが置いてあった。そして、調停委員が2人いて入り口の反対側に座り、委員の背中側にはホワイトボードが置いてあった。

私達は入り口側から見て左側に座り、右側には相手側の男性弁護士がすでに座っていたが、愛人の姿はこの現場には無かった。その光景を見て私は、これから調停の話し合いがどうなっていくのだろうと不安を感じながら、黙って座った。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『娘からの相続および愛人と息子の相続の結末』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。