第5章 相続、再び

次の日の夜、姉が私達の自宅を訪問して雄二と面会してから、改めて詳しく今回の案件について説明した。雄二は、姉に弁護を依頼し調停の申し立てに関する手続きを開始するよう深々と頭を下げてお願いした。その後で、姉に疑問に思っている事を聞いた。

「伯母さん、今回の調停で法律どおり、あの男の全遺産の2分の1を獲得する事ができるのでしょうか?」

「どうだろうか? 私も正直、江藤光夫さんの元愛人で現在は妻になっている女性が、もう一方の遺産相続の権利がある雄二ちゃんに承諾も得ないで、勝手に全遺産を相続し手続きを終了させた後になって、その手続きが無効であり、当時者2人での遺産分割協議をやり直す主張を、裁判所に認めさせる今回みたいな案件を担当した事がないので、やってみないと分からないのよ!」

「そうですか。それでも僕の弁護をよろしくお願いします!」

雄二は、姉に再度深々と頭を下げた。それを見た姉は、雄二の手を両手で握って首を縦に1回振って雄二の目を数秒間眺めていた。

そんな事があった日から、3週間ほど経過した平日の午後に裁判所から封筒が届いた。その中の1枚に調停の第1回目についての開催日時等が記載された紙があった。雄二から裁判所から郵送された物については、自宅に到着したらすぐに姉に連絡するように言われていたので急いで連絡した。

「ひろみ、もう1回確認するけど来週の火曜日の午前9時30分から開催されるのね」

「そう記載されているわ」

「了解。雄二ちゃんにも必ず連絡しておいてね。その日に必要と思われる書類等はこっちで準備しておくから、遅刻だけしないように言っておいてちょうだい。あと予定の15分前に裁判所の駐車場で現地集合するから、待機しておいてと言っておいて」

私は伝言があった日の夜、雄二に裁判所から郵送された封筒を渡してから姉の伝言の内容を伝えた。

「了解。職場には開催日に休みをもらえるようにお願いしておくよ」

そう言ってから夕食を食べ始めた。