六月二十六日 火曜日

少女と動揺とポニーテール 3

中学二年のとき、わたしは生まれて初めてクラスの副委員長というものになった。

要は、受け手のいない役目が、頼まれごとに弱そうなおとなしい人間にまわってきた、というだけなのだが、だれかの補佐とか雑用処理とか、そういう仕事にさしたる抵抗のなかったわたしは、まあ、いいや、くらいの軽い気持ちでそれを引き受けてしまった。

ところが、それがまちがいのもとだった。

クラス委員長を引き受けた男子は、外面(そとづら)がよくて、生徒からの人気はすごく高かった。ところが実際には、自分が目立つこと以外はなにひとつせず、面倒ごとのいっさいは、結果としてわたしに押しつけられた。

「きみは将来も、そういうくだらない男に振りまわされて苦労しそうなタイプだね」

「よけいなお世話です。わたしの未来に不吉な予言しないでください。ていうか、いきなり人の話の腰を折らないで」

わたしは、ミュウの唇の先をちょんと指で突いてから話を続けた。

「―それでね、月二回のクラス委員会議も、ほとんどわたし一人が出席してた。その会議で、いつも席が隣りあうマオといろいろ話をするようになったの」

会議が終わったあと、二人で盛りあがる話題は、いつでも三年の上原先輩のことだった。「今日も先輩、かっこよかったね」「うんうん!」というように。

うわあ、背が高い。百七十センチ以上あるんじゃないかな―会議で初めて先輩が立ちあがったとき、まずそのことが、わたしに鮮烈な印象を残した。

きりっとしたポニーテール。凜としてまっすぐなまなざし―わたしを含む、義務感だけで会議に出席している生徒とは、雰囲気がぜんぜんちがう。

会議をしきるはずの生徒会役員は、さっさと帰ることしか頭にないような人で、いつもまるでやる気がなかった。ともすればだらだらにゆるんで、あらぬ方向に滑っていこうとする会議に手綱(たづな)をかけ、きちんとしたかたちにまとめるのは、決まって上原先輩だった。