第1章 オーバー30歳(over thirty)のクライシス

②オーバー30歳の可能性

プロへの階段

では、この質問はどうでしょう。今の仕事に満足していますか。5年後も、今の職場で働きたいと思いますか。

先ほど、自分に合う仕事というのは、自分が決めるものではないと述べました。職場では、ひとつひとつの仕事に点数も偏差値もつきませんが、どこの会社でも人事評定というものがあります。上司が部下の仕事ぶりをみて、業績評価をしてボーナスや次の異動先を考える資料にしています。

私も学生時代は偏差値に苦しめられて過ごした者のひとりですが、会社に入ってからは偏差値などという物差しはなくなりますので、点数のとれない私にも、もしかしたらチャンスが巡ってくるかも知れないと思いました。当然のことながら、入社試験は良い成績では入社していません。

しかし入社後、折々でお世話になった上司には、ペーパーテストでは測れない人として様々な側面を評価して頂いたおかげで、周りからは、水を得た魚だねと揶揄されるほど、誇りに思える仕事に出会えたことに感謝しています。そんなにいい上司にばかり出会えないと思っているかも知れませんが、職場の人間関係は絶えず変化しますから、いつまでも気の合わない上司のもとで働くわけではありません。

同僚も同じです。相性や他人を気にする前に、まず職場の中で、自分自身がどういう存在かを客観的に考えてみる必要はあるでしょう。見る人は必ずあなたの行いを見ています。評価を得たければ、より良い人間関係を築くことと、媚びることなく、あなた自身を正直に表現することです。

当然のことですが、仕事に対する満足感は、人から与えてもらえるものではありません。あなたが仕事に対して真摯に向き合って、はじめて手に入れることができるご褒美みたいなものです。仕事はその積み重ねです。

そうこうしているうちに、自分がその道のプロだと思える仕事に、出会える日が来るかも知れません。いいえ、30代、出会わなければなりません。

30代はリスタートのチャンス

冒頭で、アイドルグループ「嵐」が人気絶頂期にもかかわらず活動休止を決めた話をしました。アイドルなんかに、なりたくてもなれないのに贅沢だとも感じますが、マスコミ報道では知り得ない彼らの気持ちを突き動かす何かがあるに違いありません。彼らひとりひとりには、それぞれに素晴らしい才能と活躍できる場所があります。

ですから30代後半という年齢を考えたとき、次のステップに進む道を選んだのではないかと想像してしまいます。20代のときとでは、異なった視点で仕事が見えてくるのは、アイドルも私たちも似ているところがあるのかも知れないと偉そうなことを書いてしまいましたが、30代後半になったというところがキーポイントです。

私がビジネスパーソンだった頃の出来事と重なります。当時、才色兼備で誰もが憧れていた先輩がいました。ある日突然、「私、やりたいことがあるから会社を辞めることに決めたの」と打ち明けてくれました。「先輩に憧れて今日まで頑張って来たのに」という私に、「35歳になったし、人生にはターニングポイントがあるのよ、まだ、分からないかも知れないけどね」と返してくれました。

何かを始めるには、人生に遅すぎるということはないのが前提ですが、仕事としてリスタートするなら、新しい知識の仕込みの時間を考慮すると40歳では少し遅いのだろうか、と先輩の言葉を聞いて、その時は漠然と思いました。それから数年後、私も30代になり、大好きだった仕事に後ろ髪引かれる思いで退社する道を選択しました。

30代は仕事に慣れてきた分、この先このままで良いのだろうかという迷いが生じる年齢でもあります。仕事を続けているときは、与えられた職務を責任と誇りをもって遂行すべきです。そうした中で、新しい分野でリスタートしたいと思うかどうか、夢や目標は働きながら作っていけばよいと思います。