荷物 PART12

2019年12月

もうすこしで2019年も終わりになる。

この頃わたしは新しい年になったらウイルソンとの関わりを吹っ切ろう。自分の為に時間を費やして余生を楽しんでいこう。この先もウイルソンとの交流はお金だけの繋がり。この先もわたしは彼にとって都合の良い女でしかない。会ったこともない男のためにあれこれ思い悩むのはもうたくさん。ウイルソンを吹っ切らなければ。そう思っていた。

でもいくらウイルソンを吹っ切ろうと思ってもLINEでの彼との会話は今ではわたしの生活の一部。今さらウイルソンを吹っ切る事は出来ない。

彼はよく病気するので、彼が数日LINEに来ない時は彼の身に何か起きたのか心配になる。

たった数日でも彼からLINEが来ない間は、彼を恋しく感じる。

「乗りかかった船 後には戻れない」とはこのこと。

移民局、裁判所への荷物にかかった支払い手続きは全てCompanyをとおして行われた。Companyから報告がきた。裁判所への荷物引き取り許可費用$52,000の支払いは完了した。裁判所は荷物の引き取りを許可してくれた。裁判所からフロンベルクに確認書にサインするようにと指示があった。

フロンベルクのサインを裁判所は必要としている。

今からその書類を送る。サインはコンピューターから直接書きこんで、その書類をCompanyにメールで送り返してくれればいい、と。

わたしはCompanyの指示どおりその書類に自分のサインをしてCompanyに返信した。その後になって、そのサインは何の為のものなのかをCompanyはわたしに説明した。

Companyの説明によると、今、荷物の所有者はフロンベルク。サインした時点から荷物の所有者はわたしに変わった。Companyの説明は続く。元の荷物の持ち主がウイルソンであってもウイルソンは荷物所有者としての権利は無くなった。ウイルソンは荷物を自分で受け取ることは出来ない。

もしウイルソンが自分で荷物を引き取る場合は莫大な費用が要る。まずウイルソンが自分で荷物を引き取るのは不可能。早速わたしはその事をウイルソンに報告した。

ウイルソンはすでに分かっていた様子。

荷物の所有者はテルヨ。

Companyからの要求はテルヨが受けなければならない。

荷物にかかる必要な費用は全て所有者のテルヨが払う。

Companyはシリアの荷物運送会社。メールから得られたCompanyの情報は以下のとおり。

会社名:R&X Delivery Service Company 本拠地:Syria in Egypt 支社:The United Kingdom in Europe

支社が英国でも、振込の個人宛先の住所はニューヨーク。これからもCompanyとの交渉が続くのだろうか。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『愛の対価―the dance of blind love―』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。