六月二十五日 月曜日

少女と告発と海潮音 3

上原佐希が、2-Fに呼び出されたのは、その日の放課後だった。

桜井桂衣子といっしょに前方扉から入ってきた佐希は、ほとんどの生徒が残ったままの教室をぐるりと見わたした。

ひっつめたポニーテールと強い意志を感じさせる目が、ここまでやってきた彼女の覚悟を印象づける。

「なに、これ。公開裁判かなにか?」

「わたしたちなりの公正なやりかたよ」

教壇のほうに向かって歩きながら、桂衣子が答えた。

「金曜日にここで起こったこと、二階(・・)にも当然伝わってるわよね」

「ああ、あのこと。おおかたの生徒は無関心を決めこんでるけど、呪いだとかなんとか、無責任な騒ぎかたをしている子もいるよ」

黒板の前で立ちどまった桂衣子は、「そんなところでしょうね」とうなずいた。

「時間をかけたくないから単刀直入に言うわ。その事件に関して、木曜の夕方、あなたがこの教室にいるのを見たっていう人がいる。その事実を確認したいの」

「それで、この出頭命令ってわけ?」

だれかが「せめて任意同行って言ってよ」と声を発した。

「黙って」

桂衣子のそのひと言で、ざわつきかけた教室の空気がすっと静まる。