短所と長所は裏表

上の娘は化粧に大変時間がかかります。

里帰りしてきたときは、洗面所を長時間独占されるので困っています。でも、美しいものに興味がある娘だからこそ、快適な家を私たちに紹介してくれたのだと思います。

ところで、私は30代の後半から、読み終えた本のエキスと感想を大学ノートに記録するようになりました。7年前に家を建て替えようとしたときには、その読書ノートの数が30冊程度になっていました。

仮住まい先に引っ越すに当たって、「とにかく物を捨てなければ」とパニックになっていた私は、その読書ノートを捨てようとしたことがあります。

ところが妻は、

「ノート30冊がどれだけスペースを取る言うんよ。私が預かったげるから捨てんさんな」

と言って、私にノートを捨てさせませんでした。

当時の私は、市役所を退職して老人ホームに再就職したばかりで、慣れない福祉関係の仕事に苦手なパソコン業務が加わり、自分がそれまでに勉強したことが何の役にも立たないと、否定的な気持ちになっていた時期でもありました。

そういうこともあって「捨てよう」と思ったのですが、あのときあのまま捨てていたら、大変な宝物を失うことになって一生後悔したと思います。

でも、それを妻が救ってくれたのです。

この本を書くに当たって、自分がこれまでに築き上げてきた考え方や信念を振り返ってみる必要を感じた私は、老人ホームを辞めてから、読書ノートをすべて読み返しました。ノートを捨てなかったおかげで、それができたのです。

読書ノートの読み返しは大成功でした。励まされ、勇気づけられ、たくさんの元気をもらいました。文章から滲み出る宇宙の源流のようなものに触れることができたからだと思います。

今こうして本を書いていると、それがどんなに役に立っていることか、妻にはいくら感謝してもしすぎることはありません。

ところが、そんな妻なのに、ちょっとしたことで毎日のように娘と衝突しています。私から見れば、介入しすぎるのです。

娘とはいえ、もう大人です。なのに、保育所での孫に関するトラブルでも、自分が気に入るように娘が対応していないとよく怒っています。放っておけない性格なのです。

でも、そのような性格だからこそ、私に読書ノートを捨てさせなかったのだと思います。逆に、夫がすることに無関心な妻だったら、私は大変な宝物を失ってしまうところでした。

私は、妻の一見短所に見える性格に救われたのです。

とはいえ、これからも「いちいちうるさい」と、妻に腹を立てることはあると思います。

でも今回の気づきにより、回数は減っていくことでしょう。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『本当はこんなに幸せだった』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。