パートナー(一)

一方、権美子は、カレッジの一年生の時、ソウル明洞の「古都」の店頭にアルバイト募集の張り紙があったので、ふと立ち寄り女将に面会した。

女将が年齢を聞くと、二十四歳と言うので

「何かあったの」

と聞いたところ、彼女は、

「梨花女子大の受験に二度も失敗して、今は、カレッジの一年生です」

と言った。

これは、使えると思った女将は、店主とも面談し採用された。

翌日から、彼女を有名大学のアルバイト学生だと紹介すると、一見淡い翡翠を感じさせる色白の肌をしていて、顧客の大きな反響があった。

それから、まもなく店主に仕事が終った後の夜のビジネスを紹介された。女将は、元妓生で、男を喜ばせる方法を懇切丁寧に伝授した後、彼女は、店主からも指導を受けた。

客との商談は、全て店主に繫がれ、在日韓国人や、日本人相手に彼女は色白の美形でもあったため、梨花女子大在学中との触れ込みで相場の二倍でも引く手あまただった。

彼女の手取りは、六割だったが、十二時前に早退すると、手取りが逆転する。若いので毎日稼ぎ、半年経った時、店主に闇金融を紹介され、更に、年利三〇%の金利を稼ぐことも覚えた。

その頃、李正真が日本料理店「古都」で出会ったのが、権美子だった。

三回目に初めて店主が連れ出すことを認めた。客との交渉は、全て店主が差配していた。

いつの間にか、カレッジも退学となり、二十五歳になって、そろそろまともな生活をしなければと考えていた時、かなり年上の在日韓国人の実業家に出会ったので、これは、一も二もなく良い伴侶だと、結婚を餌に誘惑した。

彼も結婚を望んだので、兄に相談したが二十七歳も年上だったので当初強く反対された。

共立商事は、もともと韓国の商社(主にオッファー商)や、一部ではあったが、直接得意先に供給元のオッファー(見積書)を繫ぎ、一定の口銭を得ていた。

通常決済は、LC(Letter of Credit at Sight 一覧払信用状)によって行われ、主な得意先は、東宇製鉄、銀星社、陽明重工業、三倉電子といった大手メーカーであった。

また、主な取引品目は、松田電器産業や、共同製作所、石川重工業、大和製鉄などのエアコンや、冷蔵庫用のコンプレッサー、電磁鋼板、機械部品や電機部品などで、一部、三田物産や、三和商事などを通じて取引せざるを得ない場合もあった。

設立後最初の決算では、六〇億円の売上を上げ、一〇%の配当をしたが、その後は、出来るだけ架空経費を計上するなどして、無配を継続し、友人たちの出資に報いることはなかった。

友人たちが、もう関心すら示さなくなった平成元年十一月友人たちの名義を勝手に自分名義に書き換えた。この年七八億円売上げたのを頂点に、業績は下降に向かっていった。