華僑の商法における情報収集

さて、話は少し変わりますが、世界のビジネス界で優秀といわれる華僑の商法においては、相場情報というものは[最低3つの信頼できるチャンネルから収集すべし]という鉄則があるそうです。

私は30歳前後にそれを香港の方から聞いて感心し、それ以降常に励行するように心がけています。

ここで大事なのは[3つの信頼できるチャンネル]ということです。

信頼に値しないチャンネルはいくつ持っていても役に立たないのです。信頼できるチャンネルをもてるかどうかは常日頃からの人脈づくりにかかっていると思います。

そのためには、まずはその相手が信頼できる相手なのかどうか、逆に自分自身がその相手に取ってお付き合いをするに値する相手であるかどうかを見極めて人脈を作っていく意識が必要です。

相手が私のことを「この人と関係を深めても得るところがあまりないかなあ」と思っている場合は、いくらこちらが関係を深めることに熱心でもあまり長続きしないものです。

つまり、お互いに相手の人柄を気に入るのと同時に、利害が一致してお互いに得るところが多いかどうかがwin―winの関係になれるかどうかの基準となります。人脈はそこら辺の要素を見極めながら構築していくのがいいと思います。

実例 整理と分析で答えが見えてくる

―収集した情報の整理と分析で浮かび上がる解―

これはサッカー界での実例ですが、ある時E国サッカー協会からE国の代表チーム監督に日本人コーチを推挙してほしいという依頼がありました。

その時サッカー協会の交渉担当者から私は相談を受けていました。担当者に聞いたところ候補者は既におり、日本でも監督経験があり優秀なD氏という方で、他国の代表監督に是非挑戦してみたいと意欲満々であるとのことでした。

すんなりことが進めばいいなあと私は静観していましたが、途中からどうも雲行きが怪しくなってきました。年間報酬額でなかなか折り合いがつかないとのことでした。

D氏とE国協会の希望額はおよそ15万ドル程の開きがありました。

たまたま、私の知り合いに15年程前にE国の代表監督を務め、現在は他国のサッカー協会の要職にあるW氏という方がいました。E国出身のW氏はE国サッカー協会の事情に明るいだろうと思った私は彼に電話をかけ、D氏の前任者である前E国代表監督のドイツ人コーチがどのぐらいの報酬を受け取っていたか知っていたら教えてほしいと頼みました。

直ぐに

「およそXX万ドルだよ」

と、ことのほか簡単に教えてくれました。それは現在E国サッカー協会がD氏に提示している金額と同じ金額でした。

私は即座にその事実を交渉担当者に伝え、これでまもなく交渉が決着すると期待しました。それから数週間が経ち、交渉担当者と廊下ですれ違ったときに、

「そういえば、あの案件は折り合えたのかな?」

と聞いたところ、まだ双方の主張が平行線のままで暗礁に乗り上げてしまっているとのことでした。

私は少し驚きました。交渉担当者曰く、双方とも歩み寄ろうとしないとのこと。私の見立てではE国協会の収入規模から判断して、大幅に代表監督に支払う報酬額をあげる可能性は少ないと思っていました。

ここはD氏にかなり譲歩してもらわないと交渉は妥結しないだろうと思っていたのですが、交渉担当者曰く、D氏を納得させることができないでいるとのことでした。