「そういうことか。それなら私の答えは二つだ。一つは、『俳句は面白いぞ、とにかくやってみろよ』と未経験者を焚きつける答え。もう一つは俳句のリアルを話すから、その後で君たちが判断するということ。どっちがよいだろう」

三人ともすぐに俳句のリアルを選んだ。私は俳句を始めてすぐに、東京のある中堅俳句結社に入り、ぶっつけ本番で句会に参加したので、当初は、評価してもらえる、すなわち『取ってもらえる』句が全くできなかった。

そうした日々が半年くらい続いた。天才でもない限り俳句は、句らしい句が作れるようになる迄に時間がかかるのだ。数年間駄句しか作れず、嫌になってやめる人も多い。それが一見簡単そうにみえる俳句のリアルだ。

ところが、私は幸運にも俳句の神様にお会いする機会に恵まれ、それから少しまともな句ができるようになり、俳句が面白くなってきた。

「俳句の神様なんているのか。俳句の神様と呼ばれている、えらい俳句の先生に会っただけじゃないのか!」

立村が少し素っ頓狂な声をあげた。

「違う、本当に俳句の神様が私の前に現れたのだ」

私は、初めて神様が降りて来られた春の日の朝のことを、三人に話した。