私(わたし)「おつかれさまでした!」

青鬼(あおおに)「俺達(おれたち)は、お前達(まえたち)人間(にんげん)のように定年(ていねん)もないし、年中無休(ねんじゅうむきゅう)。働(はたら)きたいだけ働(はたら)いて、老後(ろうご)はゆっくり温泉(おんせん)でも行(い)って、ゆったりと休(やす)むつもりだ。そういえばお前(まえ)さんは? いくつになるんだ?」

私(わたし)「私(わたし)はもうじき、九十四歳(きゅうじゅうよんさい)になります。青鬼(あおおに)さんは?」

青鬼(あおおに)「俺(おれ)か! 俺(おれ)はお前達(まえたち)とは桁けたが違ちがうんだよ。だけどお前(まえ)に言(い)うと、お前(まえ)はきっと笑わらうと思おもうから、言(い)わないでおくよ」

私(わたし)「そんなぁ。いいじゃないですか、歳(とし)くらい。私(わたし)も教(おし)えたんだから、青(あお)さんだって教(おし)えてくれたって」

青鬼(あおおに)「青(あお)さん? お前(まえ)、だんだん気安(きやす)くなったな! 俺(おれ)は、青(あお)さんと呼(よ)ばれたのは初(はじ)めてだぞ! まぁ良(い)いだろう。俺(おれ)もお前(まえ)が気(き)に入(い)った。お前(まえ)、笑(わら)うんじゃぁないぞ、今こと年しで千(せん)と三(みっ)つだ!」

私(わたし)「ハハハ……、千(せん)と三(みっ)つ! 千(せん)三(みっ)つか! ハハハ……」

青鬼(あおおに)「ほら見みろ! お前(まえ)、失礼(しつれい)だぞ!」

私(わたし)「だって『千(せん)三(みっ)つ』はオカシイよ。私達(わたしたち)人間(にんげん)の世界(せかい)じゃ、嘘(うそ)ばっかりついて、千(せん)に三(みっ)つしか本当(ほんとう)を言(い)わない奴(やつ)を、『千(せん)三みつ』と言(い)うんだよ!」

青鬼(あおおに)「だから俺(おれ)は言(い)わずにいたんだ。俺達(おれたち)は、嘘(うそ)は言(い)わない。第一(だいいち)、何(なに)も嘘(うそ)を言(い)う必要(ひつよう)がない世界(せかい)だからな」

私(わたし)「青(あお)さんは、千年(せんねん)も生(い)きているのですか?」

青鬼(あおおに)「そうだ。俺(おれ)も歳(とし)だから、あと百ひゃく年ねん経たったら、そろそろ温泉(おんせん)にでも行(い)って、ゆっくりしようと思(おも)っている」

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『地獄・極楽列車 私と青鬼』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。