第1章 なぜ本を読むのか?本の意味

本を読みたくならない理由

お話ししたように、本書における読者の対象は、習慣的な読書家ではありません。

「本を読むのが三度の飯(めし)より好き」と言う人は、私のたわごとなんかを聞く以前に読んでいますから、むしろ余計なお世話でしょう。

また、

「自分は本に頼らずとも十分幸せだし、人生を切り開く術(すべ)を心得ている」

と言う人がいたとしたら、そういう人に対して

「いえいえ、そんなこと言わずに、読書も捨てたものではありませんよ」

と、私程度の人間が説くのもナンセンスというものです。

そのちょうど中間というか、

「読書が大切なのはわかっている。読みたいとも思っている。でもページをめくる気がしない」

とか、

「できれば、読まずに済ますことはできないだろうか」

とかを考えている人に、私はたいそう共感します。

また、

「本を読んでいる人って堅そうだし、インテリっぽいし、頭はいいかもしれないけれど、人としてはどうなの」

なんていう態度を示す人にも、恐ろしいほどのシンパシーを覚えます。私もそう思っていましたから。

読書に対してネガティブなイメージをお持ちの人に、いきなり本の良さを伝えても響きません。まずは、そのマイナスの考えに理解を示すというスタンスから話をはじめないといけないでしょう。

そこで冒頭では、本を読みたくならない理由についての心理を追求してみることにします。