俳句・短歌 短歌 2021.10.25 短歌集「蒼龍の如く」より三首 短歌集 蒼龍の如く 【第20回】 泉 朝雄 生涯にわたって詠み続けた心震わすの命の歌。 満州からの引き揚げ、太平洋戦争、広島の原爆……。 厳しいあの時代を生き抜いた著者が 混沌とした世の中で過ごす私たちに伝える魂の叫び。 投下されしは新型爆弾被害不明とのみ声なくひしめく中に聞きをり 伝へ伝へて広島全滅の様知りぬ遮蔽して貨車報告書きゐし 擔架かつぐ者も顔より皮膚が垂れ灼けただれし兵らが貨車に乗り行く 新聞紙の束ひろげてホームに眠る中すでに屍となりしも交る 息あるは皆表情なく横たはり幾日経てなほ煤降るホーム (本文より) この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 病み細りし足には下駄のなじまねば たびたび砂利につまづきぬ 退院して踏みし畳の足ざはり この清しさを幾月も恋ひし 退院の吾と並びて寝し父は 心ゆるびていびきし給へり
エッセイ 『59才 失くした物と得た物』 【新連載】 有村 月 結婚してから35年、「愛」はなくとも「情」は生まれる ダンナが死んだ―まさかの現実。自覚はなかったが、この時から私の「おひとりさま」は始まろうとしていたようだ。たしかにダンナは肝臓の数値が悪いと1ヵ月半入院したものの退院、体力も少しずつ戻りはじめ還暦祝の1泊旅行もし、そのたった1週間後にはこの世からいなくなるなんて、頭の中のすみっこにさえなかった事。よくいう野球の九回裏2アウトからの逆転満塁ホームラン的な。その1年半前、最愛の母が「くも膜下出血」で…
小説 『俺たちのアビリティフォース』 【第20回】 藪坂 りーた あの時の姿になれた!力を手に入れたレッカは憑依生命体へと立ち向かう! 意を決した後、それを天に掲げ、「来い!」と短く静かに声を張った。すると一層の輝きが体を包み込み、「……お、おお。 き、きた! 」あの姿に……、なれた。全身をくまなく確認したが、ちゃんと全身オレンジ色を基調としているあの時の姿だ。「っしゃあ! 行くぞっ!!」自ら鼓舞するように両腕の拳を握りしめ自分に気合を入れる。衝動が抑えきれない。つい先程存在を頼りにしていた院さんの事も待てず、いきなり目先数十メ…