野生動物保護や鉱山、配管などのコースがあるのもオーストラリアらしい。航空業界と提携し小型機の操縦免許が取れるプログラムもあるというからすごい。小型機の操縦は広大な農場には欠かせない。

いずれにしても、ハイスクールでこれだけの種類の学習ができるのは、国が職業教育に力を入れているからだろう。

介護の道を選んだイソベル

南オーストラリア州のホームページに、ハイスクールで職業教育を受けた生徒の体験記が掲載されていた。

イソベルという女子生徒の話だ。

彼女は8歳のときに母をがんで亡くした。その際に母が病院で受けた手厚い看護に心を動かされ、11年生のとき高齢者支援の職業教育の科目を履修した。

毎週金曜日には学校を離れ、看護助産専門学校で実践的な訓練を受け、高齢者施設での実習も行った。11年生の終わりにはAQFの資格を取得し、同時に、高齢者施設の看護助手としての仕事も得た。

臨時雇用で働き始めた彼女だったが、やがて週30時間の職務に就くことになる。在学中のことだ。

彼女にはハイスクールの単位がまだ残っていた。そのため、12年生のイソベルの生活はこの上なく忙しいものとなった。

シフトも最初は週に1、2回だったが、人員不足から次第に回数が増えていく。昼食を食べながら宿題をする日もあったという。夜勤を終えてそのまま学校に行くこともあったが、

「私は高齢者介護が好き。自分のおじいちゃんやおばあちゃんを100人近くお世話しているような気持ちです」

と彼女は言う。

結局、12年生の3学期まで、介護助手としての仕事を2つ掛け持つことになった。後に彼女は言う。

「仕事も学業も基本的にフルタイム。だから勉強との両立は本当に大変でした。でも、12年生は何としても修了したかったので、仕事の一つはパートタイムに変更しました。学校もすごくサポートしてくれたので、スケジュールは何とかやりくりすることができました」

さらに彼女は次のように言う。

「自分に合った道を選ぶにはいろいろな科目を履修してみるのがよいと思います。10年生のときは医者になりたかったのですが、職業コースの科目を履修して、自分の選ぶ道は高齢者介護であることがはっきりしました」

イソベルはいずれ大学で看護師になる勉強もしたいと思っている。

彼女の経験は、職業教育の成功事例と言えるだろう。