ロレンソは顔だけフリアンに向けて、きっぱりと言った。

「フリアン、君も危ない。これ以上、君を危険な目にあわせたくない。頼(たの)むから行ってくれ」

「私を信じてくれ、ロレンソ。もう少し、あとちょっとなんだ」

しかし、その直後(ちょくご)、爆音(ばくおん)が地面をゆるがした。ロレンソとフリアンは、一瞬(いっしゅん)で跡形(あとかた)もなく消えてしまった。

このとき、フランシスコは十二歳だったが、父親似で背の高い少年に成長していた。

事件の後、マリアはフランシスコを連れて、都市に逃(のが)れた。その町で、古いけれども立派(りっぱ)な石造りのアパートを借り、二人とクレアの暮らしが始まった。

ロレンソの残してくれた貯金があったので、生活やフランシスコの学費には困らなかった。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『ヘロイーナの物語』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。