立場-1 年齢による差別(エイジズム)に反対する。いかなる要介護状態や認知症であっても、高齢者には、本人にとって「最善の医療およびケア」を受ける権利がある。

立場-2 個と文化を尊重する医療およびケア。高齢者の終末期の医療およびケアは、わが国特有の家族観や倫理観に十分配慮しつつ、患者個々の死生観、価値観および思想・信条・信仰を十分に尊重しておこなわなければならない。

立場-3 本人の満足を物差しに。高齢者の終末期の医療およびケアにおいては、苦痛の緩和とQOLの維持・向上に最大限の配慮がなされるべきである。

今回示した提言にみられる一貫した考え方は、立場1の論拠で書かれています。

すべての人にとって、「最善の医療およびケア」を受ける権利は基本的人権のひとつであるということ。

そして、どのような療養環境にあっても、たとえ高齢で重い障害があっても、「最善の医療およびケア」が保障されなくてはならないということなのです。

高齢者にとって終末期に「最善の医療およびケア」を受けることは、子供が風邪をひいて小児科にかかるくらい、普通のケアであると思います。

私はこの普遍性について、当たり前のことが大事なことなのだと、特に強調しておきたいと思います。

すべての高齢者の方々は、そう遠くない将来に自分自身の問題として、自らの終末期に直面します。たくさんの人々がこの問題に直面し、2025年を過ぎたころには、その処遇でさまざまな問題が噴出しかねません。

だからこそ、立場1の「年齢による差別(エイジズム)に反対する」、といった提言が必要とされるのでしょう。

※本記事は、2021年6月刊行の書籍『改訂版「死に方」教本』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。