健康寿命は、「日常生活に制限のない期間の平均」で、年代別(年齢階級別)の「健康な人の割合」を基礎として算出されます。

では、「健康な人の割合」はどのようにして把握するかというと、厚生労働省が行う「国民生活基礎調査」において、若い人も含めて年齢に関係なく無作為抽出された人を対象に、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」と尋ね、「ない」と回答した人を健康とみなして計算したものです。

ですから、重い障害を持って生まれてきた子の健康寿命はゼロ歳とカウントされます。調査時にたまたま、体調がよくなかった人、若い人でたまたまそのときケガや病気をしていた人で、「はい」と回答したら「不健康」に含まれてしまいます。だから、健康寿命がかなり短くなってしまうわけです。

また、全世代に回答を求めている(若い世代の回答も含まれている)わけですから、高齢者が自分の健康な期間を知るために参照するにはそもそも相応しくないと言ってもいいでしょう。

一般には、健康寿命を「要介護にならずに、自立生活が可能な期間」といった捉え方をしている人が多いと思いますが、このような捉え方とは無関係な数字なのです。さらに言えば、「平均寿命」をこのような広告に用いるのはまったく適切ではありません。

平均寿命というのは、「ゼロ歳の子が平均的に何歳まで生きそうか」という数値であって、もう何十年も生きている人には何の関係もないからです。自分の年齢だと平均的にあと何年生きるかは、毎年発表される「簡易生命表」から知ることができます。

たとえば、二〇二〇年時点で、六五歳の男性の平均余命は一九・八年ですから、平均的に八五歳まで寿命があるということです。女性では同じく二四・六年なので、九〇歳近くになります。

悪気はないのでしょうが、あのような広告は、高齢者には何の関係もない「平均寿命」を用いていること、また、調査方法によってかなり短く出てしまう「健康寿命」をまるで「高齢者が自立を失う年齢の平均」であるかのように使っているという二点で、ひどいミスリードと言わざるを得ません。